山下清氏の日記について。

 

昭和31年発行の「山下清 放浪日記」(現代社刊)。編者は式場隆三郎氏(山下氏の庇護者であり彼の絵の才能を見出した精神科医。日記を書くように山下氏に命じたのも式場氏)と渡辺實氏。同書に、山下氏の日記の修正していない原文が掲載されている。

 

少しだけ引用すると、

 

 「油絵具で花火の絵の色をぬって居た時みや子先生が来たのでみや子先生が昼からしきば先生が来て一しょに東京へ行くんだからすぐ行く支度をしてくれと言はれたのですぐ昼飯を食べてから体をふいてしゃつとさるまたとずぼんをはきかへて居る中しきば先生が来て花火の絵を見て居るのでしきば先生が写生をする道具を持って行けと言はれたので写生の道具を持ってからしきば先生と一しょに行くので門の所に自動車が来ているので(以下省略)」。

 

 句読点は全くない。接続詞「~ので」と「(する)と」をつないで文章は延々と続く。ほとんどは「~ので」だ。ただし句点相当だと考えられる文章の終わりはある。3つの段落があり、一つの段落は一文として続いていて、一文は約1100字。例外的に二つ目の文章の終わりの方に、途中で文を終わらせている箇所が一つだけあった。直筆の原文は見当たらないのだが、ノート6ページに記されたとあるので、ノートの升目か目盛りに正確に従って、正確に2ページで一文を書き終える意図があったということになる。一文の終わりは、ノート2ページ分の区切りという事以外には、文を終わらせる理由が見当たらず、次の一文から新しい展開が始まるわけでもなく、他の個所と同様に「~ので」でつないでいってもおかしくない内容だ。この「~ので」は理由を示すという本来の意味もあるが、リズムをとるための反復語としての役割も果たしている。山下氏の文章がリズミカルでいつの間にか引き込まれてしまうのは、その独特の歌うように続いていくリズム感だ。

 

 起承転結の起承の連続だ。起承)承)承)承)承)承)・・・・・と従属節が延々と続いていく。蜘蛛が糸を吐き出すように、山下氏は記憶を出力している。全体の構成は考えていない。ただ過去の身の回りの出来事を時間の流れに沿って綴っているだけだ。

 

 

 因果関係は延々と続いて終わりはない。一文を終わらせるタイミングは常にある。「ので」の代わりに句点をつければいいだけだ。山下氏はサヴァン症候群で発達障害者だと言われている。知的障害はテレビドラマ程ではないそうだが、人のいう事をなんでも素直にきく傾向があったのは確かだ。しかしトラブルに対しては逃げる。少年時代は暴力に及んでいたが、式場氏に出会ってから暴力的傾向はなくなった。

 

 日記は、過去の事実の因果関係を書いている。前節が次節で描かれた行動の動因になり、それが続いている。この文章には一見して、思考というものが無いように見える。ただ事実を写実的に書いているだけで、全体の構成が考えられていないからだ。ところが、これが人間の思考の骨格なのではないだろうか?つまり、過去を分析して次の行動計画をたてる事、これが思考の骨格なのだ。

 

 以前書いたが、主体と自己意識は別であって、主体が自己意識に従属することで意識主体となる。自己意識である私の役割は、規範を探し規範を作ることだ。主体が従属すべき行動規範を考える事、これが自己意識の役割だ。

 

 

 テクノロジー犯罪の被害で発生する言葉も、常に次の行動規範を考えさせようとする。たとえば、私は足が痛いと考える。すると声は「足が痛いから?」と次の行動を考えるように促すのである。「だから?」「それから?」という声もある。この声は、本来聞こえないはずの自己意識の機能が聞こえている、ということになる。何かを尋ねるような声の全ては、同じ意味を持つ。私が自己意識として考えなくてはならない事は、次の行動規範であって、過去を記憶し、分析し、次の行動を考える事、過去の因果関係を分析する事だ。


 精神工学兵器は、規範を考えさせた上で、その直近の規範を繰り返す。直近に繰り替えされる規範は、直近の行動に関するものではない。そして、その言葉が繰り替えされる以前に考えていた行動計画は忘れている事が多い。忘れるのは威圧的なリズムを持つ背景音が継続的に聞こえているためだ。従って行動は衝動性を持ってくることになる。何かをしようと考えていて、その行動の実行までに時間的な猶予がある場合に、別の時間を基盤とする規範や因果関係を考えさせられて、その規範が繰り返されて、先ほどまでにやろうと考えていたことを忘れているのである。

 

 山下氏の文章も絵画も、完全説明の指向性の表れだ。(参照:文字の真実性と神聖性、音韻表象と抽象書記素の普遍性と不変性(同一性)、真実性への従属 | 私はテクノロジー犯罪の被害者なのだが・・・ (ameblo.jp))。つまり真実への忠実性が高いのである。真実性に固執するのは、ADHD障害者の特徴だ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 2024年1月11日に、『思考盗聴の正体 2』をAmazonから発売しました。

 

ペーパーバック版が税込み1540円です。

 

Kindle版でが税込み800円です。

 

 

ホームページ『テクノロジー犯罪の記録と証拠』に加害の為の手続き作業を行っている人間の録音記録を掲載してあります。

テクノロジー犯罪の記録と証拠 (newspeppercom.wixsite.com)