山本太郎氏が18日の参議院内閣委員会において、セキュリティクリアランス制度について質問というか、いつものように持論を展開していたYouTube動画を見た。

 

 彼は、SMバーにおいては、「女王様には逆らえません」という規範に権威を付与している。政治資金でSMバーに行っていたとされる大臣について糾弾していて、SMバーで女王様に馬乗りになられた状態では機密を漏らしてしまうのではないか、という趣旨だ。この規範は道徳や法律などの生後に獲得される規範では無く生物的な本能の規範であって、外在化する必要のない規範だ。reproductionの欲求に根ざしている。自己の複製を行う全ての生物は、この欲求に従属性を持っている。彼の言う事は生物的には正しく真実性がある。ただし意識は本能に対する従属を中止したり延期したりできる。しかし、山本氏は、人間意識は生物の本能に勝つ事はできない、という規範を外在化した上で、その規範に権威を付与している。つまり、彼においては、その規範(本能に対する絶対的な従属、機械的な反応としての従属)を確信しており、信念となっているのである。

 

 本能的な衝動は誰もが自覚しており、誰もが日々その衝動と戦っている。つまり、私が言いたいのは、彼は人間一般を侮辱し貶めたということだ。人間の尊厳を剥奪したのである。人間意識が葛藤し、苦悩する意味を、一刀両断の元に、簡単に切り捨てたのである。そのことを自覚できずに、この話しをあちこちの演説会で繰り返すのは、彼の底の浅さを物語っている。全く思慮がないのである。

 

 

 この質問は生物の衝動性についての問いかけだ。人間は意識の発達によって衝動性を緩衝できるようになった。即時的な反応、衝動的な反応を、延期し、あるいは中止できるようになった。

 

 山本氏の設定したシチュエーションにおいては、快楽を得る為に、重要な機密を喋ってしまうことが衝動的行動だ。意識は、この衝動を抑制する事が可能だ。生物としては、即時的に喋る事が正しい。生物的な真実性を有する。ただ意識の注意機能は、危険検知から発展して危険予知ができるようになった。つまり長期的な利益と不利益を勘案できるようになったのである。この場合でいえば、機密を喋ってしまう事は、自らの地位を危うくするという未来の不利益が予測されるので、その行為は回避すべきだということになる。

 

 衝動性を試される瞬間は誰もが一日の内に何度も遭遇する。このパターンだけではない。重要な事は、そのシチュエーションではなく、衝動を抑制できるか否か、という事に尽きる。彼は、そういう状況では喋るだろう?という規範(因果関係)を一般化して質問をしたのだが、人間全般に当てはめる事のできる答えは無い。その因果関係は必ずしも再現されない。あくまでも個人的な衝動性の問題だ。本人以外に聞いても分かる訳がないし、本人でさえよく分かっていないかもしれない。そもそも、山本氏は自らの衝動性について理解していない可能性がある。

 

 山本氏は、そういう状況では必ず喋る、という確信を持っている。意識は生物的衝動には打ち勝てないという信念がある。つまり、彼こそが、衝動性を抑制できない張本人である事を公言しているのである。彼は自ら思考実験を行い、自らを被験者として、自らの習性を明らかにしてしまったのだ。という事には気付いていないだろう。もっとも、彼の衝動性は、天皇陛下直訴事件から、最近の国会での質問に至る迄、明白に現れている。

 

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 最後に山本氏を擁護したい。彼は戦略を誤っただけだ。別の面から攻めるべきだったろう。彼の衝動性が、彼の判断を誤らせたのである。しかし、彼の指摘通りに、機密を漏らしてしまうという衝動性は、肩書きの権威によって阻止できるとは限らないかもしれない。

 

 彼が問題にしていたのは、政務三役は機密情報に接触するための適性検査が不要だという点だ。これは個人的な衝動性の資質の問題だ。肩書きは、この衝動性を抑制する要素の一つとはなり得る。また日本政府、国家に対して付与している権威の大きさも要素になる。しかし、客観的に衝動を抑制できるか否かを判定する検査として、対象者全員に、適性検査として、アンチサッケード検査を実施すべきだろう。

 

 サッケード(急速眼球運動)検査は、画面に表示された目標を瞬時に眼球で追随できるかを検査する。一方、アンチサッケード検査は、画面に表示された目標の逆(たとえば)に眼球を動かす事ができるかどうかを検査する。追随は衝動性であり、抑制は衝動性を抑えて意識的に実行しなければならない。追随が生物的には真実だ。

 

 ただし、アンチサッケード検査で落第だった場合には、ただ衝動性があるという、それだけでは済まない、という複雑な事情もある。認知症、統合失調症、ADHDの可能性が示唆されてしまう。すると、落第した人の社会的地位が危ぶまれてしまうということになる。だから多分実施する事は無いだろう。

 

 もし実施するなら、公平性を期して国会議員全員にこの検査を実施し、落第した人には議員を辞めて貰う事にすべきだろう。

 

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 国会答弁で頑なに、ある件については話さない役人がいる。そして、その事を頑なに追求し、糾弾し続ける国会議員がいる。

 

 しかし、どれだけ追求されようとも、しゃべられない事はしゃべられないのだ。守るべき人間、守るべき権威は守らなければならない。善も悪も無い。自己は常に正義だ。しゃべられないのは、その権威に服従しているからだ。私はしつこく国会議員に糾弾され頑なにはぐらかす役人をみて、頑張ってるな、とたびたび感心する。たとえ悪事を隠しているのだとしてもだ。「話せないことは、何があっても話せないのだ」という心の叫びが聞こえてくるのである。

 

 エドワード・スノーデンは、なぜ内部告発したのか?という社会的な構造は重要ではない。なぜ彼は内部告発ができるのか?なぜできるようになったのか?という彼の内面の構造と構造の変化が重要だ。先日は、米国副大統領のセキュリティエージェントが精神障害と考えられる行動を実行してニュースになった。Secret Service agent assigned to Kamala Harris detail involved in fight with other agents - Washington Examiner

内部告発は、衝動性に負けたのだ。エージェントの乱心も衝動性に負けたのである。いずれの衝動も米国政府という権威に対して、衝動性が打ち勝ったのである。

 

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 このブログで何回か山本太郎氏について書いたのだが、理由は彼が面白いからだ。彼は正義感が強く、感情的で、非常に分かりやすい反応をする。人間として好感が持てるタイプだ。と最近は考えるようになった。彼の演説会の特徴として、来場者に何でも良いから質問をしてもらって、回答するというものがある。これも面白い。彼は突っ込みどころ満載で、弱点を平気でさらけ出す。面白いと思わせる事は重要だ。私は政治に無関心だが、彼の動画は頻繁に見るようになった。これはどういう意味を持つかというと、彼に対する最初の感情、『あまり好感が持てない』は、意味を為さなくなる。同じ規範に何度も触れる事によって、規範従属性が醸成されていくのである。この場合の規範とは、山本太郎氏であり山本太郎氏の言動だ。彼を利用している人物がいるとすれば、優れた戦略家だ。並の戦略家ではない。その戦略家を彼は知らないのかもしれない。彼の周りに集まってきている人々の中に、まさにその戦略としての駒が含まれているかもしれない。

 

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 ちなみにテクノロジー犯罪は被害者の衝動性を高める。その仕組みは下記の自著にも書いた。被害者は、その高められた衝動性と戦わなくてはならないので、地獄になる。意識は、地獄を味わうために存在しているかのようだ。

 

 

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ホームページ『テクノロジー犯罪の記録と証拠』に加害の為の手続き作業を行っている人間の録音記録を掲載してあります。

テクノロジー犯罪の記録と証拠 (newspeppercom.wixsite.com)