思考盗聴防止グッズがメルカリで販売されていて、それがネット上で話題になっている、というニュースが4月18日付けのYahoo!ニュースに掲載されている。運営側のメルカリは、利用者に向けて「根拠がないので注意してほしい」と呼び掛けているそうだ。

 

 どこかの掲示板には、プラシーボ(プラセボ)効果を謳えば問題ないだろう、という書き込みがあったのだが、プラシーボ効果だと予め知ってしまえば、効果は無くなってしまう。信じ切っていなければならないのだ。

 プラシーボ効果は科学的にも認められている効果だ。薬の臨床試験では、偽薬(プラセボ)と実薬が見た目では分からないようにして試験を実施する。プラセボによって病気の症状が改善することもある。

 

 このテクノロジー犯罪はプラシーボ効果が効く可能性が高い。加害システムは自己暗示を利用しているからだ。そしてプラシーボ効果も自己暗示だ。どちらが勝つかは被害者の気持ち次第ということになる。

 ただ、根拠がないと報道されてしまった今では、プラシーボ効果は期待できない。

 これは、様々な問題を孕んでいる。例えば、出品者は商品の使用による思考盗聴防御効果があったというデータを持っているかもしれない。そして、仮にプラシーボ効果を期待して、その効果を知っていて販売していたとすれば、プラシーボ効果を謳うことはできない。効果がなくなってしまうから。

 

 私は、この業者を擁護するわけではないのだが、ではこのようなプラシーボ効果を期待した商品はどのように販売すればいいのだろうか。また、原価が数円程度の物を数千円で販売するのは、使用者の被暗示性を高めるのに有効である。これが数十円で売っていたら、その効果を誰も信じないからプラシーボ効果も期待できないのである。これが数百万円なら抜群の効果を発揮するだろう。

 

 

 思考盗聴には他にも便乗ビジネスが多々見られる。

 

 便乗ビジネスで高い買い物になるのが探偵社だ。広告の文面には「思考盗聴対策」と謳っているが、精読してみると、思考盗聴の“実在”を肯定しているわけではない。思考盗聴という“概念”の存在を肯定しているだけだ。うまくすり抜けて書いてある。藁にもすがる思いの被害者は、この広告を見て思考盗聴されている事を確信するに違いない。

 

 依頼した場合のオチ(=調査結果)も想像に難くない。それは営業妨害になるかもしれないので書かない。しかし、依頼者が、その結末に納得した場合には、やはり同じくプラシーボ効果によって、被害が無くなるあるいは減衰する可能性はあるのである。その結果に納得して自己暗示を掛けられるかどうかだ。

 

 と、ここまで記して気づいたのだが、この私の文章を見て、信じてしまった被害者には、プラシーボ効果は効かなくなってしまっただろう。

 

 

 「思考盗聴の正体-条件付けされた脳が自分を攻撃するハイテクノロジー犯罪」(デザインエッグ社刊)第二版をAmazonより2022年4月25日に発売します。