パチンコメーカーの藤商事はサブリミナル効果を狙ったパチンコ台の特許(特許番号:特許第3029562号)を持っていた。詳細は特許情報プラットフォームJ-platpatで特許番号を入力すれば出てくる。2015年10月30日に特許切れになっている。従って、どのパチンコメーカーも藤商事に特許使用料を払わなくても自由にサブリミナル効果を利用する事ができる。
 サブリミナル効果は、意識下で知覚できるかできないかの小さな刺激を提示する閾下プライミングの効果を指す。なお、プライミング効果とは、「先行する刺激(プライマー)の処理によって、後続刺激(ターゲット)の処理が促進または抑制される効果」(脳科学辞典、「プライミング効果」より抜粋)。調べた所、サブリミナル効果は法律で禁止されているわけではなく、例えば放送業界では自主基準で自粛しているに過ぎない。



 さて、サブリミナル効果については、また別の機会に記すことにして、特許の説明文になかなか興味深い事が書いてある。
 藤商事の特許では、閾下のサブリミナル表示(0.04秒から0.08秒程度:説明文より)だけでなく、暗示図柄の表示をかろうじて認識できる程度の時間(例えば0.2~0.5秒程度:説明文より)に設定することもできるようにしているのだが、その理由を、「暗示図柄の不可解さに疑問を抱くようになり、疑問を解明すべく思考しながら面白くゲームを行うことができる。」としている。
 「何故それが表示されたのか?」という疑問を解明するために、人は自分勝手な理由を考える。実際の理由は、「あなたに考えさせるため」だという事に、灯台もと暗し的な理由であるという事に、気づくことはないのである。

 



 実はテクノロジー犯罪も同じだ。私もいろいろ考えさせられている。
 しかし、私は、加害システムの仕事の一つが “ターゲットに考えさせる事” だという事には気づいている。

 人間の想像力は無限なのだから、その想像力を利用した方がいい。人間の想像を“実現”するよりも、人間の想像を“確信”させる方が、遙かに安上がりで簡単だ。そして、いかなるSF的科学技術もいかなる壮大な陰謀も無限の想像力によって創造することができるのである。

 

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