神戸で開催される世界パラ陸上大会において、子ども用の無料観戦券が保護者によって転売されていることが問題視されています。これに対し、組織委員会は「パスポートが出品されたのは趣旨にそぐわず、悲しい。不審者が紛れ込まないよう厳重にチェックし、各学校には保護者らが転売しないよう注意喚起する」との声明を出しました。

 

 

もちろん、もし危険人物が紛れ込む可能性があるならば、その対策は必要です。

 

しかし、この状況を別の観点から考えると、「ダダでも行く価値がない」と考える者と「金を払ってでも行きたい」と考える者が存在します。このような価値観の違いを考慮した場合、より行きたい人がチケットを手に入れることが何故問題とされるのか疑問が残ります。市場の原則に基づけば、価値をより高く見積もる人がチケットを入手するのは自然な流れです。たとえそのチケットが無料であっても、それを転売して利益を得ることが倫理的に問題とされるかもしれませんが、需要と供給の観点からすれば合理的な行動とも言えます。

 

組織委員会が「この人(特定の属性の人)に見てもらいたい」という気持ちは理解できますが、それを強制するために市場原理を無視するのは傲慢に映ることもあります。社会全体で考えると、多様な価値観や欲望が存在する中で、誰にどのような体験を提供するかは難しい問題です。無料観戦券の趣旨を守りつつ、より多くの人にその価値を感じてもらうためにはどのような方法が最適か、慎重に検討する必要があるでしょう。

 

転売が完全に悪であると決めつけるのではなく、その背景にある人々の価値観や行動についても理解を深めることが求められます。結果として、より多くの人々がパラ陸上の魅力を感じ、参加したいと思うような環境を作り出すことが、大会の成功に繋がるのではないでしょうか。