3月期決算企業の株主総会が26日にピークを迎える。国内外の機関投資家に議決権行使の助言をする米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)日本法人の石田猛行日本リサーチ代表は、新日本製鉄の会長と社長の再任反対を推奨する姿勢を明らかにした。インタビューの要旨は以下の通り。
――今年の株主総会の傾向は
委任状争奪戦のような派手さはないが、コーポレートガバナンス(企業統治)の中心となる役員の選任議案が厳しくみられている。これまで遠慮があった国内機関投資家も、議決権行使基準を設定したことで積極的に反対票を投じるようになった。年金基金など資金の出し手が運用会社の議決権行使結果を評価する動きも後押ししている。
――取締役選任議案で反対を助言するのはどんなときか
本当にどうしようもないときだ。取締役選任議案に反対するのは核ミサイルのスイッチを押すようなもの。混乱を招くので、とても慎重に調査している。(1)株価の騰落率が市場平均を大幅に下回る、(2)株価純資産倍率(PBR)が明らかに低い、(3)3期連続赤字、(4)社外取締役がおらずガバナンスが働かないといった場合、経営トップの選任反対を考慮するようにしている。
今年は40社前後のトップ選任議案で反対を助言した。大企業では24日に総会を開く新日鉄の三村明夫会長と宗岡正二社長の再任に反対を助言した。買収防衛策発動の客観性を担保する社外取締役がいないのにポイズンピル(毒薬条項)を導入しているうえに、株式持ち合いによる評価損が大きく業績が悪化しており、株価も低迷していることなどから判断した。学習研究社も買収防衛策としての株式持ち合いによる評価損が大きいため遠藤洋一郎社長の再任反対を助言した。
不祥事から再任反対を助言するケースもある。荏原がそうだ。昨年、監査役の大森義夫氏が「元副社長による会社資金不正支出問題に関する調査が不十分」として、同社の事業報告を承認しないと表明し、注目を集めた。大森氏は追加調査を求めたが取締役らは具体的な調査結果を説明しなかったので、矢後夏之助社長の再任に反対を助言した。
これは日本のコーポレートガバナンスを考える上で非常に意味を持つケースだ。日本経団連は監査役がいれば経営監視できるとして社外取締役の導入に消極的だ。大森氏はまさに監査役として権限を行使し、一石を投じた。荏原で注目されて以来、監査役が企業に問題提起する事例が目立つ。
――社外役員の再任は業績を考慮するか
基本的に独立性が保たれていれば業績が悪くても再任に賛成するが、不祥事があった場合は反対することもある。アイフルの社外監査役は任期中に不祥事が相次いでおり、経営陣を監視できていると考えられず、再任に反対した。最近は企業間で社外取締役を出し合う「持ち合い役員」がいるが、独立性があるとはいえない。日立製作所と新日鉱ホールディングスのように持ち合い役員が判明した企業については選任に反対を助言するようにしている。
――今年は株主提案が減っているようだが注目している議案は>
米投資顧問ブランデス・インベストメント・パートナーズがロームに対して自社株買いを求めている。ロームとしては人に言われずとも既に自社株買いを実施しているという気持ちが強く、提案への反対を要請している。ただ、株主側は合理的に反対する理由がないので、当社は賛成を助言した。
ここ5年ほど株主総会における総議案数は減少傾向にある。配当や賞与、ストックオプション(株式購入権)の付与といった議案が株主総会を経ずに取締役会で決議できるようになったからだ。総会議案にしないというのは経営陣にとって自分の首をしめているようなもの。買収防衛策だけに反対したくても、議案がないので取締役の選任議案に反対するしかないからだ。否決されずとも、反対票割合が2%から4%にあがったら取締役はプレッシャーを感じる。議案ごとの得票率を開示すれば、ガバナンスの規律が高まるだろう。
引用:日経新聞
http://markets.nikkei.co.jp/features/03.aspx?id=MMMAx3000019062009