トランプ氏の試練:レーガンになれるか? | ビジネス人間学
いまこそ知りたいドナルド・トランプ [ アメリカ大統領選挙研究会 ]
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アメリカ大統領選挙研究会 水王舎発行年月:2016年07月01日 予約締切日:2016年06月29日 ページ数:126p サイズ:単行本 ISBN:9784864700566 1 ドナルド・トランプとはどういう人物なのか?(ドナルド・トランプという男/ドナルド・トランプの性格/揺らぐことのないポリシー ほか)/2 トランプと政治(色物トランプが怒濤の快進撃/どうして大統領選に立候補したのか?/支持層は白人の低中所得層 ほか)/3 トランプの暴言&迷言セレクト52/4 50億ドルを稼ぐビジネス術(なぜトランプは50億ドルを稼げたのか/市場調査と経験に裏打ちされた直感/50億ドルを稼ぐ勝者の宣伝力
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 米民主・共和両党が党大会を終え、11月の大統領選へ向けた選挙運動がいよいよ本格的になってきた。ここで、そもそもの大きな疑問が頭をもたげてくる。ドナルド・トランプ氏が大統領になるという考えに安心できる国民は十分にいるのかという疑問だ。

 仮にそうであるなら、大統領選は接戦になる公算が大きい――トランプ氏が十分に勝てる可能性を秘めた接戦にだ。トランプ氏は結局のところ、2つの大きな資産を持っている。1つは、変化が求められているこの年に変化をもたらす人物だとみられていること。もう1つは、経済的な手腕も勝っていると考えられていることだ。今年、米国民が確実に得たいと思っているものがあるとすれば、この2つがそれだ。

 反対に、米国民が不作法かつ予測不可能な性質――イラク戦争で息子が戦死したイスラム教徒の夫婦に対する発言に表れているような性質を持ったこの男を大統領として見ることができないのであれば、トランプ氏はどこかの時点で天井にぶち当たり、そこから上に進むことができなくなるだろう。そうなればヒラリー・クリントン氏の勝ちだ。

 両陣営とも、今秋の大統領選ではこの問いがカギになるという基本認識を持っている。トランプ陣営の選挙対策責任者ポール・マナフォート氏はオハイオ州クリーブランドで開催された共和党の党大会でそのことについて公言した。

 マナフォート氏は政治の世界のほぼすべてを見てきたベテランだ。彼は今回の選挙戦をロナルド・レーガン氏がアウトサイダー候補として出馬し勝利を収めた1980年の大統領選になぞらえている(マナフォート氏はレーガン氏のために活動した経験がある)。1980年のレースでは、多くの国民が元俳優を将来の大統領候補としてなかなか受け入れることができなかった。知性面でふさわしくないとか、安全保障面で危険すぎるなどと冷ややかに批判した向きもある。

政治家としての経験値

 だが当時の米国民は現状にうんざりしていた。激しいインフレや、イランの米大使館で学生たちが米外交官を人質に取るという屈辱的な事件が起こった現状にだ。国民は変化を求めていた。問題は変化をもたらす人物として、レーガン氏を安全な選択肢としてとらえられるかどうかだった。

 投票日のわずか1週間前に行われた最後の討論会でようやく、レーガン氏が大統領にふさわしいと認めた有権者も多い。

 マナフォート氏は先週、ブルームバーグ主催の朝食会で、「ちょうどレーガンの時のように、大統領になれる人物としてドナルド・トランプがひとたび国民に受け入れられれば、レースは終わると確信している」と話した。「それがいつになるかは分からない。自分たちの仕事をするだけだ」

 だが、レーガン氏と並列に論じることが説得力を持つかどうかは全く分からない。まず、レーガン氏は1980年までにはベテラン政治家として十分な経験を持っていた。米国最大の人口を抱えるカリフォルニア州で知事を8年間務め、出馬した1976年の大統領選も全力で戦っていた。

 換言すれば、レーガン氏は今年のトランプ氏のような、リスキーなアウトサウダー候補者ではなかったのだ。レーガン氏は異端的ではあったが、トランプ氏より経験があり、有権者が安心感を得るまでの時間も長かった。

人柄に対する有権者感情

 それにこんな違いもある。レーガン氏の人柄は好感を持たれていた。一方、トランプ氏の性格に対する有権者の否定的な感情は、これまでに十分に記録されている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCニュースが共同実施した最近の世論調査によると、例えば、回答を寄せた有権者の60%がトランプ氏の性格に対して否定的な感情を持っている。トランプ氏に好感を抱いている有権者はわずか27%だ。

 世論調査会社ギャラップは今年、1980年の大統領選の最中のレーガン氏に対する国民感情を調査し、それがトランプ氏とは対照的だったことが分かった。ギャラップによると、「全体として、レーガン氏は1980年の大統領選で、一貫して好感度のほうが高かった」。

 1980年1月のギャラップ調査で、レーガン氏の支持率は60%をつけている。人格に関する好感度を10点満点で評価する設問では、同年5月と8月の調査で国民の70%がレーガン氏を肯定的にみていた。

 もちろんクリントン陣営も、好感度や信頼性という厄介な課題に直面していることを理解している。クリントン陣営は同氏が大統領になるという考えに安心感を持ってもらいたいと考えている――民主党の党大会で同氏の信頼性を証明する数多くの演説や、夫や娘から非常に私的な話が披露されたのはこのためだ。だが、民主党側は少なくとも、トランプ氏を大統領にするという考えが無党派層に根づかないことを確実にしたい意向だ。むしろ、そのビジョンを恐ろしいものとして見てほしいと思っている。

 クリントン氏は大統領候補の指名受諾演説の中で、「彼はわずかな挑発で冷静さをなくす」人物だと批判。「記者から厳しい質問を受けたときや、討論で挑戦されたとき。抗議のデモを見たときなど。オーバルオフィス(大統領執務室)で本物の危機に直面したときの彼を想像してほしい」と語った。

 クリントン氏はレーガン氏という先例に言及したが、その意味合いはかなり異なっていた。「米国に再び朝がきた」というレーガン氏のスローガンを引き合いに出すと、トランプ氏については「共和党を『米国の朝』から米国の夜中にはるばる連れてきた」と攻撃した。

 大統領選までの3カ月間に、取り組まなくてはならない問題は数多くある。だが、最初でおそらく最後の問題は、最も基本的な問いでもある。トランプ氏は大統領にふさわしいと思ってもらえるかどうかの試験に合格できるだろうか? 

(筆者のジェラルド・F・サイブはWSJワシントン支局長)

By GERALD F. SEIB



引用:トランプ氏の試練:レーガンになれるか?


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