夫との会話はこの30年、彼の日本語の習得レベルと共に変化しており大きく分けて次のように移行してきた。①英語のみで会話、②私は時々日本語で話し、夫はそれを理解して英語で返事する、③夫のために曜日を決めて日本語オンリーの会話日を設ける、④お互い好きな時に好きな言語で話す(笑)

 

上記③と④の間には夫の並々ならぬ努力があり、常用漢字のテキストを2周するとか、ネット視聴できるNHK高校講座で歴史、地理、公民なんかでも語彙を増やしていた。日本での駐在時にはニュースを毎晩しっかり聞いていたので言い回しや熟語も脳の海馬へとせっせと送っていたのだろう、気がつけは敬語も含め日本語をわりあい自由に話せるようになっていた。

 

近年は人のモノマネでも笑わせてくれる。今でもよく口にするのが「サザエさん」のタラちゃんと日本文学研究者のドナルド·キーンさん。なぜこの2人なのかは未だに不明。家にいると突然この二人がわが家にやって来るのだから返事に窮する(笑)

 

今日は「はぁ~い。ボクはそっちを食べるですぅ~」というタラちゃん語の数時間後にキーンさんが。太字の部分にアクセントをつける感じで、「ワタシはテモ、ねむーいです。たい。源氏物語の訳はテモ、ツカァレマス」 アクセントのみならず口をこもらせる独特の発音の仕方が既にキーンさん!翻訳はしてないと思うけど先に寝てくださいまし爆  笑

 

そこまでのマネは良かったのだが、最近彼は日本のドラマを見てしまった。それは「だが、情熱はある」という吉本の芸人さんのお話で、そこから習得したのは「なんでやねん!」笑い泣き どうやら作中で漫才の相方さんに突っ込みの特訓があり、何度も何度も「なんでやねん」を練習するところが頭に残ったらしい。ナンデヤネン。。

 

6月に家に戻って来てからも夫はずっと博士課程3年目に進むための論文修正に明け暮れていたのだが、教授からの注文事項が送られて来た時にコンピューターを睨みながらこう言った。

 

「最初に書いていたのもけっこうよくまとまってたのに、ナンデヤネン!爆  笑爆  笑

 

それがもう、本当に完璧に芸人さんレベルの言い回しで、私は横で笑い転げてしまう。私も「なんでやねん」と言ってみたが、何かが違う。再度言ってみるけど、やっぱり上手くいかない。おかしいな。

 

「なんでやねん」は「で」にアクセントつけてや。

と、アメリカ人の夫に指導を受ける私は関西人笑い泣き

 

一括りに関西弁と言っても実は微妙なバリエーションがある。例えば「来ない」という言葉は 京都では「きーひん」なのに大阪では「けーへん」、兵庫では「こーへん」となる。同様に「なんでやねん」も京都弁では「なんでなん?」と、少し表現が柔らかい。そういう元の言葉が邪魔をすることを考慮して分かったこと。「何でなん?」の「で」は短く発音するのに対し、「なんでやねん」の「で」は少し長いのだ。「なんでーやねん!」という感じだと合格点をもらえる。

 

夫は身振りもつけて手を刀に見立てて何かを切るようなゼスチャーで威勢よく「ナンデヤネン!」と言うのが面白い。が、私に大ウケして調子づいてしまい、今後誰か他の日本人に言ってしまわないかという心配が増えた。

 

それにしても私の6月を振り返ると、この言葉の出番がいくらでもある。飛行機がキャンセルになって遅れて家に帰って来ると、壊れて動かない洗濯機を真っ先に買いに行く。しかし配達は10日後になるという。ナンデヤネン!

夫の母を訪ねるためにボストンを早く出ているからもうお洗濯しないと夫の下着の替えがない。さっそくこの街のコインランドリーを探してみたが1軒もない。ナンデヤネン!

前に住んでいた集合住宅の有料コインランドリーを使わせてもらおうと思って下見に行ったが、私たちが住んでいた時には自由に出入りできた洗濯室に鍵がかかっていて入れない。ナンデヤネン!洗濯関係だけでもこんだけ使える爆  笑

 

さらに、私の年に一度の血液検査では高コレステロールと、糖尿病予備軍の結果が出た。食事には気をつけてきたのにナンデヤネン!

 

ここで気づくこと。大なり小なり、困り事として認識していたことが「なんでやね~ん!」のひと言で深刻度が数ポイント下がるではないか。私にとっては生まれてこのかた、聞いたことはあっても自分では言わない表現だったからこそ、その落差で面白味を増すのであろうか。であれば関東出身者であっても「なんでやねん」効果はきっと出る。標準語で「なぜなんだろう。。」とド真剣に考え込んだりすると、どんどん深みに落ちて行きそうではないか(笑)

 

車の中での私の呟きにも夫はたちどころに返してきた。

 

「人生なんて、色々とアホなこと言ってる間に終わるんやろね~」

「ナンデヤネン!」

 

どうやら夫は私よりは意味のある人生を望んでいるようだ。

  

 

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 明日は待ちに待った美容院でのヘアカットの日。

終わって鏡を見て「なんでやねん!」とはなりませんように~爆  笑