フライトキャンセルに見舞われ、知らない街で何とか宿泊場所を探した翌朝には宿泊客の女神さんはチェックアウト、続いて夜中に歩き周っていたもう一人の方も宿を後にされたようでした。となると今はこの家に私達だけ!これで次のゲストがチェックインするまではトイレやシャワーが自由に使える!今まで宿泊時には当たり前に感じていたことがとてもありがたく思えました。
誰もいなくなった家で夫と二人でのーんびりと紅茶を飲んでいたら、キッチンの奥のドアが勢いよく開いて、Hi!I'm Carson!と元気な声の男性が入って来ました。あ、この人が宿主のカーソンさん!と二人でちょっとびっくり。Airbnbのサイトで見ていた写真では初老のバイク好きおじさんという感じだったのですが、まだ40代前半ぐらいのお若い家主さんだったからです。時代に逆行する「老け見せ」写真を掲載していた??
「よく眠れましたか?」と聞かれて、正直に「夜中に足音がして目覚めましたが、また眠れました」と言うと、やはり最後のお部屋を借りた人は夜中の4時ぐらいのチェックインだったそう。暗証番号つきの玄関だから許可された人は午後3時以降なら何時でも入れるんですね。
キッチンの窓の向こうを指さして「僕はそこのトレーラーに住んでいます」と、カーソンさん。
へ!?窓辺に行くと裏庭に車輪のついたトレーラーホームが見えました。
中はどんな感じになってるんだろう。。興味あるなぁ。。
以前、小さな家に住む人のライフスタイルをテーマにしたBBCドキュメンタリー番組を見たことがあって、極小サイズの家でも幸せというミニマリストの生活ぶりを思い出していました。
「中はどんな感じになってるんですか?」とお訊ねすると、「見に来ますか?」と言って下さり、二つ返事でお願いすることに! 目は口程に物を言う、って言いますからきっと私の目は「見せてほしいわ~!」と訴えかけていたのかも(笑)
トレーラーへのステップを上がると、風を感じながら読書したり鳥のさえずりに耳を傾けたりできそうなオープンスペースがありました。テーブルがあればここで朝食もできそうです。
ではでは、中にお邪魔します。
ほぉ~!私たちが泊っている家の方とは違い、黒、白、茶を基調としたモダンな内装ですっきりとしています。
中二階のところが寝室で、一階奥のキッチンエリアにはレンジ、オーブン、食洗機、冷蔵庫、洗濯乾燥機などと家にあるような家電が全て完備。さらに奥にはシャワー付きのバスルームやクローゼットがあって、どこもかしこもスペースが無駄なく有効活用されています。手前にあるソファーの向かいには超特大テレビまであり。充実した備品と設備にびっくりです。
これって、まるで車輪の上に乗っている可動式1LDKマンションみたい!
トレイラーホームを購入するまでの間、家の方はゲストに貸してご自身はこの小屋(?)に住んでられたのだとか。うんうん、錆アートありで、こちらの方が彼本来のテイストなのかな(笑)私達が泊っている部屋に机として置いてあったミシン台はミシンが取り外されていたのですが、玄関ドアの左手に発見!
「ここは今一泊40ドルで貸しています」ってことだけど、トイレは家に唯一あるのを使うそうなので、今より不便ってことで泊りたくな〜い💧
この日は本来ならカリフォルニアの自宅で目覚めていたはず。それが、ゲストの女神様にはこれまでの旅の心温まるお話を伺ったり、家主さんにはトレイラーホームを見せていただいたりで次第に事態は好転していきました。いっそのこと中継地点で足止めされたのをもっと楽しもうじゃないかと、午後にはシャーロット観光に出かけることにしました。
「車呼んでね?」って夫にいうと
「あ、せやった、忘れてた」って、、
夫は自分の車がここにあると思っていたようです
運転手さんに伝えた行先は下調べで評判が良かった、アメリカ現代美術のコレクションと国際的に有名なクラフト、デザインコレクションもあるという Mint Museum Uptown
まずは美術館併設レストランでのランチから。
飲み物のティーはTea Forteが出て来て、カップやお皿もなかなかオシャレ!
この葉っぱがびょ~んと出てるのが可愛いですね
が、紅茶で期待してしまったランチはあかんかった。。カリフォルニアで流行りのアボカドトーストにしたのですが、ここのアボカドペースト(グワッカモレ)は食べられないほどスパイシーで一枚食べたところでギブアップ。上に乗っかってた卵とパンだけ食べました
辛い物も平気な夫でさえ食べられないって、、どれだけハラペーニョを入れたのか!?
メキシコ人ならこういう風には作らないからここのキッチンシェフの味覚が違うとしか考えられない。それとも今日だけ分量間違えた?(笑)夫のバーガーを少し分けてもってランチは終了。トホホ。日本円にしてこの一皿だけで約3000円なり!
アメリカの外食で美味しい物にありつくのはけっこう難しいのであります。
気を取り直して美術館入口へ。入場料を支払おうと思ったらその日は6月初めての週末ということでBank of Americaに口座を持っている人は無料であった。しめて30ドル(約4600円)の節約。ということで、あの憎っくきアボカドトーストは無料になりましたとさ
吹き抜けになってる3階からの眺め。ステンドグラスならぬ窓の装飾アートが現代美術館らしい。
さて、こちらの絵は何を表現しているように見えますか?
一見ポラック風の前衛絵画に見えますが、良く見ると何か描かれているようです。
Damian Stamer (USA,1982-) New Sharon Church Rd. 47 (2018)
解説文を読んでみると、「ここに描かれているのはノースキャロライナ州にある老朽化した納屋で、それはかつてこの州の経済を牽引した農業時代の象徴である」と書かれていました。さきほどまで何の絵かさっぱり分からなかったのにいったん「納屋」だと分かるとそのようにしか見えないというのが面白いです。脳には視覚と思考の臨界点が存在するのでしょうか。
次の2点はどちらもアメリカの画家ですが、サージェントやカサットなどアメリカを代表する画家以外にも欧州でトレーニングを積んだ技量の高い画家に出会えました。
William MacDougal Hart (USA,1823-1894) Autumn in New Hampshire, 1864
右手には既に牛が描かれているので、どこかに水車でもあればイギリスのコンスタブル作かと見紛うほどの出来栄えです。
Mariquita Gill (USA,1861-1915) The Garden at Giverny, 1895
こちらの作者はジベルニーのお庭を描きに行った初期のアメリカ人女流画家で、1889年にフランスでモネの作品を目にして以来、印象派に転向したそうです。この絵の技法はスーラ寄りな点描でしょうか。
この壺は19世紀に日本人の画家が陶器に描いたもの。中央には人間っぽい顔の「睨み龍」がいますね!
Kitaro Shirayamadani (lived in USA,1880-1967) Dragon Vase, 1892
ガラスアートが大好きな私はこちらの作品をじっくりと楽しみました。
John Kuhn (USA,1949-) Pacific Rose, 1997
え?主題は薔薇なのですか?(笑)
こんな風にメタリックアームの先に取りつけられたガラスの空間アート。右手にできた影もいいなぁ。
こちらはお馴染み、マリメッコの代表的なプリントパターン!
Maija Isola (Finland, 1927-2001) Unikko fabric 1964
Marimekko Finland, 1951-
マイヤ·イソラさんによるお花を抽象化したこのデザインは一目みて「あ、マリメッコ!」と分かるブランドアイデンティティーとも言える存在ですね。
とまぁ、ごく一部のご紹介ですが、展示作品がかなり多い見ごたえある美術館でした。なにせ場所がノースキャロライナ州ですから、もし飛行機がキャンセルになっていなかったらおそらくここを訪れることは一生無かったかもしれません。そう思うと家に帰れないという問題も悪いことばかりでは無かったようです。
夫の母、Momを訪ねた時からずっと外食続きだったのでこの日は美術館近くにあったホールフーズスーパーで買い出しをしてお宿のキッチンでお料理をさせてもらいました。カーソンさんがスパイスやオリーブオイルも使っていいよと言ってくださり。
旧式電熱レンジの温度調節に慣れてなくてサーモンの皮がちょっと焦げてしまいましたが、パリパリで香ばしく、中はしっとりした美味しいサーモンでした。やはり私達好みの味つけができるというのは嬉しいものです。空港で前夜に食べた残りのピザ風フォカッチャをパン代わりにして。
夕食後には大変嬉しいニュースが飛び込んできました。宿主カーソンさんから連絡が入って「昨日は夜遅くのチェックインがあって申し訳なかったから、今日は他の2室の宿泊をブロックしておきました。」って。わぁ~なんてご親切な神対応!
これでもう、誰が使っているか、使いそうか、などを気にせずシャワーや洗面ができます!!
しかも一軒まるごと貸し切りになったぁ~ ハレルヤ~!
やっと入れたシャワー内の内装はとてつもなく「サビ」が強調されていたのには笑ってしまったけどね~ カーソンさんご自身は見た目もお若く、「錆びない人」かな?(笑)
翌朝は早い目に空港に向かったので朝、バスルームが自由に使えるというのは本当にありがたかったです!初めてのAirbnb体験でしたが、終わり良ければ総て良し!
どんな経験も無駄にはならないのだと実感しました
困ったことは不意に起こりますが、それを受け入れ何か一歩前に行動を起こすとあとは次第に展開していくものなのかもしれませんね。家に帰ってみると今度は家の問題や脚の問題に直面していますが、落ち込まずに笑っていこう!(問題があっても)笑って暮らすアメリカ生活、今後ともよろしくおつき合いくださいませ。