スミソニアン、スミソニアン。。と呪文のように唱えながらDC近郊での生活が早くもひと月ほどに。「週末は莫大な量の課題に取り組む大事な時だから出かけられないなぁ。。」という夫に「そっか…それはしょうがないね。でもスミソニアンに行けないんやったら、もうカリフォルニアに帰ろっかなぁ…」すると、帰らないと知りながらも「いやぁ~それは。。」と困ったふりをする夫。これをもう何度繰り返したことでしょう
こうなったら食卓に「酢味噌に餡」でも出して意思表示しようかと思った頃、ふとアイデアが浮かび、授業のない木曜日はどうかとダメ元で聞いてみると「今週ならOK」ということで、数あるスミソニアンの博物館、美術館の中からまずは「自然史博物館」を選びました。他のは観るのにもっと時間がかかると思ったから。
ウーバー車を呼んでDCに向かい、わずか20分ほどで到着。こんなに近かったのか。。心理的距離はもうニューヨークぐらいになってました(笑)ロンドンでもシカゴでも自然史博物館はどこも外観、展示ともに立派ですが、ここも威風堂々とした佇いです。
入ったところで巨大ゾウの剥製が迎えてくれました。
平日のせいか人はまばらで全員きちんとマスクを着用。これなら安心とほっとします。まずは館内案内マップを買って(入館料は無料)目をつけたのが二階の展示でした。
Ocean Hall(海洋ホール)、 Human Origins(人類の起源)、 Hall of Fossils(化石ホール)などが面白そう!
エスカレーターを上がったところに海洋ホールがありました。
生命の根源ともいえる海の存在、その生態系には大いに興味をそそられます。外からは奥深くまで見えないせいもあり、そこで息づく海洋生物は何とも神秘的。カリフォルニアで寄せては返す波を眺めているうちに海そのものが生き物のようだと感じられ、気がつくと海の生態系に関することを多読するようになっていました。
ここでの説明はそれほど詳しくはなかったのですが、頭の中に入ってるものをしっかり海馬へ送り込んで記憶させてくれるという役割を果たしてくれました。サンゴ礁についても独特の世界を想像しやすい言葉選びがすごくいい!
Reefs offer two great benefits; food and shelter. They flourish in warm , sunlit water ideal for the plants and other organisms that fuel the food web. Their structures provide homes-and hiding places.
サンゴ礁は食料と避難所という二つの大きな恩恵をもたらします。植物、その他の生物が食物網を勢いよく広げていくためにも理想的な、太陽に照らされた温かい海水内でサンゴ礁は良く育ちます。サンゴ礁の構造は生物に家と隠れ場所を提供しているのです。
自然史博物館の楽しいところは大昔の地球やそこに住んでいた生物の様子が分かること。私たち一人ひとりの人生はたかだか100年ほどですが、46億年前から地球はあって、人類が出現する前の世界はどんな感じだったのかなども伺い知ることができます。
これは大昔に存在していたサメの口の実物大模型ですが、恐竜以上の迫力ですね!人なんか簡単に飲み込めそう
この古代サメは最大全長18.5メートルって書いてありましたよ!このメガサイズのサメは2300万年前に進化出現したらしいのですが、その後絶滅。一般にサメ類は4億4400万年も前から地球に存在していたんですね。
この説明ボードの一番下の図で大きさ比較してありました。現代の大きなサメ(下)と人間と、この巨大ザメ。。あわわ。。
まだ海洋ホールの入り口付近で私は説明パネルをいちいち全部読むものだから、あっという間に夫とはぐれてしまいました💦 ま、いざとなったら電話できるし。。と思ってクジラの写真でも撮ろうかなと構えたら、知ってる人に邪魔されました(笑)
会えて嬉しいけど今、写真撮ってるって知ってるよね!?
ほんまにもう、面白いったらありゃしない。。笑いながら撮った割には手振れなし!
ということで、はぐれていた片割れを無事取り戻し(笑)、人類の起源コーナーへと向かいました。
子供時代からこういうのは大好きな領域です。実家にタイムライフ社の地球や生物に関する大型シリーズ本があったのですが、その中の「進化」の一冊は特に気に入っていて小さい頃から繰り返し猿人類や遺伝に関する写真を見ていたのを覚えています。イギリスでなまじっか英語を覚えてしまったものだから言葉の方面に進んでしまいましたが、本当は歴史や生物なんかを学んでいても良かったのかな。。
進化に関するこの手のものもすごく好きでした!
二足歩行に初めて成功したご先祖さんからゆっくり時間をかけて脳の容量が増えていったのですね。一番上の中央が私たち、ホモサピエンスです。
ここにとても重要なことが書かれています。簡単に訳すと、「今からお目にかけるヒトの頭蓋骨は6大陸で出土した古い時代のものですが、他の化石の状況などと合わせて考察すると、ヒトがそれぞれの地域にいつ頃到達したかという証拠を与えてくれます。ホモサピエンスは30万年頃までに東アフリカで発祥し、そこから世界中に広がっていきました。異なる環境に順応する形で身体的にも文化的にも差異が生まれました。それでもヒトのDNAは他人とわずか0.1%しか違わないのです。私たちは皆、驚くほど似ているのです。」
そのように実感できなくても、私たちの先祖はみんなアフリカから来てるんですね。だからDNAは異人種間でもほとんど同じ。それならもう人種差別もそろそろ辞めにしたらどうかなと思うんですよ。
人の見た目が気候などに合わせて変わっていっただけなのならそれぞれの地域で培った文化の違いを楽しむべきであって、差別しているなんて本当におかしなことですね。白人至上主義の人たちも元はアフリカから来たヒトなんですから。
6大陸で見つかったこれらの頭蓋骨はスミソニアンの全所蔵品の中でもかなり貴重なものですが、何とさりげなく展示されていることか。。4万年前のお方の頭蓋骨と二人っきりでご対面できるとは思いもよりませんでした。
館内にはあちこちに映像コーナーがあってテーマごとに分かりやすい説明を聞くことができます。ご先祖さんと一緒に聴いていたら夫に隠し撮りされていました。左は髪がぼさぼさのホモサピエンスです ちゃんと距離を取って座っています。飛び掛かられたらあかんから(笑)
その他、恐竜の子孫として鳥類が生き残っているとか、地球温暖化を太古からの長い歴史の枠組みで考えてもこれほど変化が急ピッチに進んでいるというのは未だかつてないということ、ヒトはチンパンジーとDNAが98.8%同じで、バナナとも60%同じ!なんて話もありました。
それから地球は今までに二度も生命絶滅危機に晒されていたのです。
一度目は2億5200万年前のマグマの大噴火。生態系や気候に激変が生じました。
二度目は6600万年前の巨大隕石の衝突により、恐竜は鳥類を除いて全て絶滅。
それでも何百年後かにまた植物がよみがえり、何百年もの間に地球は再生したおかげで今の私たちが存在するのですね。
隕石もマグマの噴火もコントロールできないのだとしても、化石燃料燃焼による温暖化は私たちの手中にあるもの。私たちの子孫のことだけでなく、地球に生息する全ての生き物の為にも正しい決断を迅速に下して実行する。国も企業も個人もきちんと役割分担して地球保全という同じ目的のために協力していけることを心底願っています。
だってもう、目先の利益だけしか見ていないと、とてつもなく大きなものを失う可能性がちらついているのですから。2035年までとか2050年までとかの目標設定というのは遅すぎませんか??
太陽光、水力、風力、神通力。使えるものは何でも試して!工業生産品の品数減らしてシンプルライフもまた良し。物に頼らないときっと精神性が高まります。次世代の為にもこういう博物館を増やしてほしいな。
三階は時間が足らなくなってさっと回ったのですが、帰りの車で娘から電話がたまたまかかってきて、重大なものを見忘れたことに気づきました。
この博物館には世にも珍しい45.5カラットのブルーダイヤモンドがあったそうです。あ、ここに載っていた!それより私はミイラを見るのを忘れたことにもショック!
紫の円内=見忘れ、赤の円内=見過ぎ~!
人類の起源や化石エリア(Deep Time)で文字通りデイープな時間にはまってしまった!
ここに滞在中、近くにまた行った時にでも、見忘れたもの見に行きます
自然史博物館で長いスパンでの物の考え方にたくさん触れることができました。