痛ましい無差別銃乱射事件が起こりました。しかも二日連続で。私がアメリカに移住した90年代と比べてみても銃による被害はどんどん悪化してきています。

 
22人の買い物客が犠牲になったテキサス州エル・パソにあるウォルマートの店の外で  
出典: The New York Times
 
どんなに恐ろしい事件でも時間の経過とともに徐々に風化する。一昨年に起きたラスベガスの野外音楽フェスティバルでの銃乱射事件(死者58人、負傷者527人) も例外ではありませんでした。無差別の銃乱射テロからどうやって身を守ればいいのか...考えても分からないままに事件のことも意識外に去っていきました。これだけの犠牲者が出たにも関わらず国が何もしないということも含めてです。
 
その後、昨年はフロリダの高校で元生徒が撃ち込んだ半自動ライフルの弾丸に生徒ら17人の命が奪われるという痛ましい事件が起こり、学生達はワシントンD.C.に集結して銃規制へを求める抗議デモを行いました。しかしこの時も国は抗議のほとぼりが冷めるのを待っていただけで何の善処もしなかったのです。
 
こんな国が他にあるのでしょうか??
 
1996年スコットランドの小学校で起こった銃乱射事件に対してイギリス政府は翌年直ちに行動を起こしました。スポーツや狩猟用以外の一般人による拳銃保持が全面禁止になり、国民が既に所持していた銃は国が買い上げるという徹底ぶりです。以来、銃乱射事件は2010年まで一度しか起きていません。
 
昨年クライストチャーチのモスクで51人が銃の犠牲になったニュージーランドでは事件直後にアーダーン首相が軍仕様の半自動銃を所有禁止にしました。
 
アメリカ政府が銃規制に乗り出さない理由は…
 
➀ 全米ライフル協会(NRA)が政府と癒着しているから。政党や多くの議員はNRAから献金を受けており、銃規制に反対するNRAのロビー活動を甘んじて受け入れてるわけですね。
 
➁ 憲法修正第2条により武器を保持するのは国民の権利だと定められているから。
 
そうだとしても1791年の憲法制定当時に記したArms(武器)という言葉は決して現在出回っている殺傷力を持つ自動小銃を意味しているわけではないのです。だからイギリスのように全面禁止ができなくてもニュージーランドのように規制する必要があるということは羊にも分かる、じゃなかった子供にも分かる論理ですが。
 
銃の凶悪乱射事件が起こると負の連鎖が生じるといわれています。模倣事件が起こることの他に銃器愛好者は銃規制を怖れて銃を慌てて買い増やすのです。実際ラスベガス乱射事件の後で全自動連射を可能にする装置が飛ぶように売れて在庫切れになったそうです。個人が所有できる銃の総量制限も無いため、幾らでも合法的に買い足すことができるというのも異常な話です。
 
実際、8月4日オハイオ州デイトンの襲撃に使われたのは高性能ライフル、弾丸は100個装填。乱射開始後わずか数十秒で死傷者が36人に昇りました。たまたま通りがかったパトロールの警官が容疑者を撃ちとめたのですが、容疑者は人でいっぱいのバーの奥に今にも入ろうとしていたところでした。そして車の中には別のショットガンまで準備していた。。警官が居合わせてなかったらラスベガス事件に近い惨事が...と思うとゾッとします。
 
この国の銃に関する最大の問題は...
 
銃を手に入れるのが簡単過ぎる
 
ということに尽きると思います。
 
今回メディアに大きく取り上げられた乱射事件は7月28日カリフォルニア州ギルロイのガーリック祭り、8月3日テキサス州南部のエル・パソにあるウォルマート、翌日のオハイオ州デイトンの繁華街ですが実際にはもっと起こっているはずだと思い、調べてみると...
 
出典: Gun Violence Archive
 
アメリカのどこかで毎日こんなに銃の乱射が起こっています‼️
 
赤枠内が今回の三事件です。黒の矢印で示した事件はニュースにも出て来ません。
それなのに死亡者が6人も!
この容疑者は住宅二件を無差別襲撃しています。
 
さらにこの記事を書いている間にも...
 
↑こちらは8/6午後2時現在
 
↑こちらは同日午後5時現在
 
黄色の部分、わずか3時間で銃による死亡者数が12人増加です!
赤で囲んだ数字は8月6日までの今年の銃乱射事件の総数なんですが、253!
他の主要国の年間乱射事件総数がゼロ又は1件ぐらいだというのに。。
 
上記の銃がもたらす各種統計をリアルタイムで発表している、Gun Violence Archive (GVA)を是非一度ご覧になってみてください。
ああ、現時点でさらに死者が二桁増えています。。
 
アメリカのどこが危険なんでしょうか?
 
これはGVAによる2019年の銃乱射分布マップです。
 
詳しく調べてみると...
シカゴが全米一の事件数になっていました。そして、そこには、、、

娘が住んでいる!滝汗 滝汗
 
今朝娘に「安全に気をつけてね、不必要に人混みに出かけたりしないで。夜遅くは外出控えるの決して忘れないでね!」とメッセージを送りました。「了解!」と返事は来るけど心配です。
 
アメリカはトランプ大統領就任以来ヘイトクライムが増加の一途を辿っています。エル・パソの事件も容疑者は「移民は有害だ」「これはヒスパニックのテキサス侵略に対する反応だ」などの犯行声明を残していました。トランプが恐るべき国内、国際政治を展開しているのはご存知の通りですが彼の差別的発言の数々は白人至上主義を肯定するもので、人種間の分断が明らかに起こっていると感じます。アメリカ合衆国を「分断国」へと推進する大統領って。。
 
今回の乱射事件を受けてトランプ氏が言っていることは非常に彼らしい発言です。「ヘイトクライムの容疑者は死刑にする」ですって? ほとんどの場合、容疑者は事態収拾時に射殺されているんですよ。そんなことを怖れる犯人はいないでしょう。
バックグラウンドチェックの強化、一般人が所持できる銃の種類や数の規制など幾らでもできることはあるはずです。

私はアメリカ市民ではないので選挙権がありません。国民を守ることに興味がない大統領が来年再選されないことを心から祈るしかできないなんて、これぞ「ごまめの歯ぎしり」です。
 
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アップ 何らかの効果的な銃規制を願って止みません。