2026年1月11日。
『「世界の涯てを生きるあなたへ」刊行記念幾原邦彦さんトークショー&サイン会』に行ってきました。
一言で感想を言うと、とんでもないお年玉をいただきました!
まだ2026年も始まったばかりなのに、こんな最高の思い出ができたなんて……!という気分です。
今回も、イベントのレポをしつつトークショーのまとめを書いていきたいと思います。
当初イベントは13時開始の回一度だけだったのですが、完売につき15時からの回が追加となりました。
私は13時が完売になってからチケット発売のことを知ったので、15時回を発売開始すぐにチケット購入。
なので15時回のみの内容となります。
場所は紀伊國屋書店新宿本店のイベントスペース。
会場に向かいながらX(旧Twitter)をチェックすると、サイン会の時にひとつ質問ができるとのこと!
え!?なにそれ!直接おはなしどころか質問できる??
急に心拍数があがり何聞こうか頭がぐるぐるまわりだしました。
何を聞こうか……。いろいろ悩みながら会場へ。
早めに14時頃現場へ着くと、サイン会が延びて開始時間が遅れるとの案内。
当初予定になかった質問タイムのおかげで時間がかかっていたみたいなんですが、それってそんなにじっくりやってくれているの!?と逆に期待が膨らみまくっていました。
列に並んでいる間に書店員さんから本を購入し、少し遅れて開場。
参加者が座る椅子は5~60脚くらい。満席でした。
トークをする正面奥のテーブルには、寺山修司の著作や関連の品が展示品のように並んでいます。
そして向かって右側の壁にも著作が。
スタッフさんの説明でこれらが幾原監督の私物だとわかりました(イベント開始前は撮影可)。
詩集だけでなく劇団が発行していたものや特集した雑誌まで、すごい、こんなに揃えてたんだ。
寺山修司・天井桟敷がお好きなのは以前から知っていたけど、ここまで集めるほどだったとは知りませんでした。
↓ここからトーク内容
※トークで話されていた内容をメモ帳に走り書きしたものを書き起こしています。あまり要約はせずしゃべった言葉に近づけてますが、意味が伝わりやすいように多少文言の修正があります。それでも前後で繋がってない箇所もありますがご了承ください。また実際の話とニュアンスは異なっている可能性があります。
※( )の文章は私の補足・注釈です。
※メモりきれてなくてここに書いてない話もあります。
※見やすくするため、インタビュー記事のように司会のQと幾原さんのAで書き分けてますが、実際はそんな堅苦しくない会話形式の進行でした。
幾原さん、司会の方と一緒に入場。
司会はこの本の担当編集をした女性の方でした。
印象的だったのは、司会が振る前から監督が話しだしたこと。
これまでも舞台挨拶やトークショーとかに参加したことはありましたが、自分から饒舌に語るの初めてではないかなと思います。2回目でリラックスしているのか、トークショー自体に慣れてきたのか、どちらにしても聞いてる方としてはとても嬉しかったです。
——まずは、私物のグッズについて。
(大学時代)こういう文化的なものはなかなか売ってなくて、本屋でカタログを見て注文をするけど絶版ということがあった。
夏休みに実家に戻って本屋に行くとそれが売ってる。田舎なので文化的な本が売れ残っていた。
(花嫁化鳥の表紙)これは林静一さんのイラストで、小梅ちゃん(飴)のイラストも描かれていて、横顔がとてもいいと思ってた。
サインを書いてもらったことがあったが、正面を向いた顔のイラストだったので残念だった。でも「ポケットに名言を」は正面向きなのでよかったなと。
——最初の寺山体験・寺山修司の印象
※あしたのジョーの作詞やテレビの文化人という印象、大学の先生に粟津潔さんがいた、というエピソードが語られましたが、この辺りは過去何度も話してるので割愛。渋谷のイベントでも語られているのでこちら
をご参照ください。以下、他では聞けなった話をメモしてます。
「あしたのジョー」は小学校に上がるちょい前に観た。あしたのジョーは空前の大ブームで——今で言うと鬼滅の刃とか…ちょっと違うけど——アニメキャラとしては初めての葬式があった。その喪主が寺山修司。
なんでそんなに人気だったのかというと、その当時はアニメの始まりだった「鉄腕アトム」を見た世代がアダルトになった時代で、安保闘争と重なる。ジョーの葬式というのが権力の犬である機動隊を倒すことと重なる。
——粟津さんについて
本にカバーがなぜついてるか知ってる?と編集の司会さんに聞く幾原さん。
司会さんは知らなかったようで、解説をする幾原さん。
売れ残りの本を再販するためにカバーをかけるから。
売れ残った本は出版社に返品される。返本は裁断するしかないけど、カバーをかけ直せばまた売れる、という理由。
その初めてのカバーイラスト描いたのが粟津さんなので、カバーを作った人とも言える。
——初めて観た寺山演劇
最初の寺山演劇はレミング。友達と3人で観たが衝撃だった。
完全暗転と女性の全裸が出てくる。それからカーテンコールがなくて拍手のしどころがわからない。
この衝撃を観客に追体験させたい思いがあった。
朗読劇(イクニプロデュースの「春琴の佐助」や「愛の地獄変」)でもカーテンコールなしの終わりがわからないものにした。
寺山さんがネズミを持ってる写真がある。これを真似てアライグマを抱いてる写真を撮った。(ウテナのカードダスの幾原監督は、アライグマのイロイロ(名前)を抱いた写真だったり、インタビューに登場したりしていた)
——本のタイトル、内容について
『世界の涯て』というのは天井桟敷の舞台『レミング~世界の涯てまで連れてって~』から。「連れてって」というのは「私をスキーに連れてって」とかからきたのだと思うけど。
「涯て」だけど、ウテナでは「果て」になってる。これはタイピングミス。打ってて変換の最初にでたとかで間違えてしまった。
昔は先人が敷いたレールがあった。レールを上を走れば報われる。
その社会が崩れて、今の人は同じ会社にずっといると考えていない。自分で考えて情報を取らないといけない時代だと感じてると思う。
寺山さんの言葉が、自分自身が会社を辞めてアウトローになった時の指針になった。
みんな小説は読んでも詩にあまり触れない。(詩に触れる機会をつくった)
——メッセージページ(各章の終わりにある幾原さんの文章)について
寺山の作品は、エッジのあるものでも(既に)死んでいる物。(書かれた)当時の社会には生きていても、後の時代には文学的になってしまう。
今の気持ちを書いて橋渡しをしよう、という思い。
率直な気持ちを書いているけど、これは赤裸々なことを書いている寺山の真似。
(こういう文章が書けたことは、これまでいろんな)失敗をしておいてよかったと思う。
——表紙の横槍メンゴさんのイラスト
「推しの子」以外にも漫画を描いていて、90年代的な感性が80年代で止まった寺山と繋がって息吹を感じる。
寺山さんも漫画家やイラストレーターとも交流があった。それとつながるものがある。
タナトスとエロスを感じる。
——本文の文字色が赤
文字が赤(ピンク)なのは、「愛さないの愛せないの」(寺山修司の詩集)の文字が赤だったんで赤でお願いした。が、一部だけかと思ってたら全部だった。
ウテナの時、漫画版では制服がピンクだったのに急に変えてアニメでは黒にして怒られた。
——この本の中から好きな詩を
p184ひとり
(「独り」というネガティブなものではなく)自由。自由だと思うと心が軽くなる。
”ひとりーとり”というダジャレが気に入っているみたいで、他でも書いている。
p189ほこりあるなら
学校で一番→大学で一番→会社でも一番を競う。
ずっと頂上戦で戦う、が続く。
負けたらどうする?
詩には、第2の選択として『野に下る』。
今の時代、上場企業で一生勤めるとは思わない。いづれ辞める。
野に下る意味は?そこでナンバーワンになる。
寺山修司の死生観や演劇の考え方
寺山さんはネフローゼで一度死にかけてる。その後は余生だと思ってるのでは。
もし90歳まで生きてたら、老害YouTuberになってたんじゃないかな。
——家出少年少女を集めてましたよね。
若い人は学生運動をやっていた。その後の時代は、スキーやデート。その頃は”お金のある世界”で、お金のない値打ちのあるものを探す。私探し。それが学生運動の終わりからカルト宗教へつながる。
寺山演劇は、舞台を事件とするのを目指してた。観た人が帰りにテロを起こそうと思わせるものを作った。
三島由紀夫と「演劇っておもしろいか」という話があった。「やっても世界は変わらない」と言っていた彼は後に自殺した。
三島由紀夫はリベラルの学生から嫌われていたが彼らにシンパシーを感じていた。タナトスに憧れていた。
寺山はその辺クールで、それは死にかけたからではないか。
タナトス(どくろ)をからかってて、エロスを求めている。
文化的な形骸になっていく寺山修司のスピリッツを伝えたい。
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私の所感ですが、歴史の人になった寺山修司の言葉を今の時代に生きたものにしたい。彼の言葉を若い人に実感できるものにしたいという想いがすごく伝わりました。
あと、しっかり書ききれていないのですが、後半は「タナトスとエロス」がキーワードになってきました。メンゴさんのイラストにも感じておられるようで、そこに寺山文学との親和性を見出しているようです。詩集から「タナトスとエロス」を読み解く、という読み方もできそうです。
トークショーのあとサイン会。
めちゃくちゃ緊張した!間近でサイン描いてもらって話もできるなんて、手汗がやばかったです。
しかしいざ対面すると、なんとも和やかで、急かされることもなく思ったよりお話をさせてもらえて感動のひと時でした。
他の方のサインしているところも見ていたけど、参加者はみんな監督のこと好きなんだなあというのが伝わったし会話もとても楽しそうで本当に素敵で素晴らしいイベントでした!
イラストは、好きな作品を言ったらその作品のキャラを描いてくれました。
素晴らしい機会をありがとうございました!





