※この記事・写真の内容は2012年10月22日のものです※
初めての3000mの夜、標高の高さで眠れないこともあるそうなのでどうかと思っていましたが、多少眠りは浅かったものの、まったく眠れないってこともなかったです。ふだんとちがういびきがしておや?と思ったけれど、そう、相部屋だったんだもの。双六岳かた西鎌尾根をたどって来た夫婦のパーティは、とても良い方で、色々お話させてもらいお勉強になりました。こうして、いろんな人と出会って、得られる知識があるんだな。
朝ごはんの時間が遅く(といっても6:00)朝ご飯前に山頂に行くには暗いし、食後じゃ後のスケジュールに差支えるので、山頂への登頂は見送り。前の日じゅうぶん楽しんだし、日の出はテント場から見た方がきれい。日の出の時間はわっくんと母は写真を撮りまくっていたらしい。僕は食事の放送があったので、律儀に食堂に出かけ、みんなのごはんをよそったり、お茶を汲んでいたら日の出でした。お茶を汲みながら日の出を拝むなんて、なかなか貴重な体験でしょう??のちの気づきとしては景色を楽しみたい人は、温かいごはんをあきらめて、さっさと小屋を出るのがいいみたいです。
ホテルと違って、食後に館内をブラつく…ってこともなく、売店でお弁当を受け取りながら、素早くバッジを購入したのですが、うっかりしてバンダナを買いそびれてしまいました。まあ、来年も間違いなく行くだろうから、いいんだけど…。バッジは20種類もあるそうですが、秋なので結構欠品してました。山小屋のお兄さんがさわやかに説明してくれましたので、通う楽しみが出来ましたと伝え、天気の様子をうかがう。今日はいいけど、明日の槍は暴風雪になるので、今日中に下の方に行ってくださいとのこと。やっぱり最終日は崩れるみたい。でも、予想に反して今日が快晴なので、ありがたい。
この日はいくつか反省点があるのですが、朝写真を撮ったりコーヒーを飲んだりしているうちに結構出発が遅れてしまいました。なんとなく誰かが来なくて…という状態を繰り返していたんだと思います。でも、この時に出合ったマダムに「お母様、すごく嬉しいみたいでテンションあがっていたわ!」と言われて、なんか僕も嬉しい。このマダムはこの山行で唯一蝶ネクタイをしていることに気づき、誉めてくれた人。裏銀座も行ったことがあるみたいで、マダムいわく「さいっっっこうよ!!」とのこと。うー!早く夏山になってほしい!
いろんな人と挨拶して、みんな各地に出発。南岳コースをまわるのはいまのところ僕たちだけ。たいがいの人は一気に下山する様子。さー!一体、どんな場所なのか?期待に胸を膨らませて出発です。槍ヶ岳から大喰岳、中岳、南岳をまわって、天狗池から槍沢…というのが本日のコース。さりげなく3000m級の山頂を一気に3つも通ってしまうんです。なんか、大それたことをうるようで、楽しみでもあり緊張感もいっぱい。
朝、まだ気温も低く、尾根づたいに歩くので、ひとたび風が吹くとすごく冷たい風が吹きつけます。気温は2度。この時期の槍ヶ岳ではふつうの気温です。個人差があると思いますが、僕は上は夏の汗をすうTシャツ、チェックのウールのシャツ、ウールの薄手のセーター、スイス製の厚手のフリースにノースフェイスのゴアテックスの上着、下はあったか素材のタイツに裏起毛のズボン、それに風を通さないよう雨具のズボン…と上は5枚、下は3枚とかなり着こんでいましたが、午後、槍沢付近に戻るまで暑いということはなかったです。しかし、母は上は半袖を含む3枚で平気だったようなので僕の着方は寒がりバージョンなのでしょう。でも、おかげで寒い思いはしませんでした。薄着のみんなが、結構暑い寒いで着替えることが多く、眺めもいいのでついついのんびり着替え休憩をとりましたが、あれも結構行程を遅らせる原因だったのではないかと、今後の山行での教訓になる気づきもありました。
大喰岳から中岳は岩を登り降りする感じで、さらにハシゴも登場しましたが、なかなか面白いコースでした。海外の登山客とすれ違ったのですが、ハシゴをかけてある場所を、長い手足を駆使し、ハシゴをつかわずに降りてきて、そのスキルとパワーに圧倒されました。
中岳は大きめの石ころを積み上げた、ごろごろ石の山ですごくどっしりしたいい山なんです。一旦ピーク(山頂)を踏んで、途中まで降りてその山容のどっしりさ加減に驚くわけです。ここで南岳方面からやって来た山ボーイ2名とすれ違う。結局子の日は出発してから5人しかすれ違いませんでした!
中岳から南岳は一旦大きな岩を越えればあとは穏やかな稜線が続くのですが、最初、大きな岩の壁と、丸いゴロゴロした岩があって、登山道を示す印はなかったけど、右手は岩壁なので、当然左の岩を適当に歩けばいいのかと思いました。でも、良く観察したら、ペンキマークがあったのです。右手の岩の壁に…(笑)。
登ってしまえば一瞬なのですが、ここはちょっと躊躇しました。一人で歩いていて霧でも出ていたら、うっかり左の岩に出て、進退窮するなんてことになったかも…と思うと、どちらもゾっとしちゃいますが、岩は母が先頭になって登ったのでそれについていって無事クリア。その後はどっしりした中岳、中岳ごしの槍ヶ岳を振り返りながら、絶景の稜線漫歩です。今日も文句なしの快晴で、見渡す限り絶景。いろんな山が数えきれないくらい重なっていて、見事で愉快でした。
分岐を越えて南岳に到着したあと、南岳小屋はもう冬季休暇に入っているので立ち寄らないでそのまま天狗原に降りるのがふつうなのですが、こんな天気がいい事めったにないので南岳小屋の先から北穂高へ続く難所、大キレットを見ておこうと足を伸ばすことに。南岳小屋に到着すると、黄色いウェアを来たお兄さんが一人テクテクと歩いてきました。方角的にまさか、と思いましたが、たった今大キレットから上がって来たらしい。うわーすごい。この日すれ違った最後の人。大キレットは神経を使うけど、いつか行ってみてねと言われ、わっくんの頭中はいま、穂高一色のようです。
壮大すぎて何がなんだか良く分からない北穂高と北穂高小屋でしたが、とにかくスケールがケタ違いなのはわかりました。数年後、僕たちも北穂高から大キレットを越えて、南岳に行くことがあるのだろうか…。強い風が吹きつける中、岩陰に隠れながらお弁当を食べて、槍沢に向かうべくまずは南岳に登り返します。
今回、一番いいなと思った写真は、上の一枚で、南岳から天狗原への分岐、槍ヶ岳を納めたものです。まずなんといっても、この広大な景色の中に、僕とわっくんしかいないんです。雲のない青空に、白亜の稜線。この世のものとは思えないぜい沢な瞬間。母は何度となくこの南岳縦走コースを「本当に素晴らしい景色なので、ぜひみんなに見てもらいたいし、みんなと歩きたい」と言っており、さぞ素晴らしいコースなんだろうな、と思っていましたがその通りでした。
そして、家に帰ってから写真を整理して気付いたのですが、3人が撮った写真の世界がそれぞれ別のものになっていて、「ああ、これがこの人が見ていた景色なのか」と当たり前のことにいまさらながら気づいたんです。母が撮った写真の中にいる僕たちは子供のころのような笑顔をしており自分達はすごく楽しかったと思っていたけど、それを見ていた母も「まさか、子供を連れてこの景色を見れるなんて、夢にも思わなかった」としみじみ言っており、母の夢をひとつ叶えることができたのなら、いい親孝行が出来てよかったと思っています。母とはいつまで一緒に山に登れるか分からないけど、この日の感動は色あせることなく記憶に刻まれるんだろうなと思っています。
と、この山行も僕の気持ち盛り上がりはクライマックスを迎えた感がありましたが、実はのんびり行動しすぎたことがたたって、南岳の分岐にかなり遅れて到着してしまいました。でも、どうしようもないので、まずは落ち着いて天狗原まで降りることに。
ここは、後から知ったのですが同じ時期に登っていた人が滑落だか転倒したようで、ヘリコプターが出動していたようです。このコースを何度も登り降りし、「ハシゴと危ないところが一か所はあるけどまあ大丈夫」という母の言葉を信じ降りてみましたけど、とにかく急!垂直なところはハシゴがあるわけですが、ほぼ垂直なところは鎖とワイヤーがあって、転倒と滑落が発生しないように、かなり神経をつかいました。経験豊富とはいえ70才を越えた母と、初心者の息子のパーティが事故でも起こしたら、世間に迷惑をかける上に非常識も甚だしいと怒られてしまうので、フレッシュな緊張感を持続させながら、相当慎重に下った次第です。
わっくん、僕、母の順で、母の通りやすそうな道を探しつつ、やはり大きな岩のコースだったので、ここはだいぶ時間がかかってしまいました。氷河公園への曲がり角についたときは僕は足は全然平気でしたが気持ち的に結構ヘロヘロで、ちょっと横になって休憩。コーヒーが飲みたかったけど、時間が完全になかったので、がまん。そのせいかどうかは分からないけど、ここから天狗池までがかなり長く感じたので、今度行くときは南岳小屋に泊まって、じっくりこのコースを楽しみたいです。きつそうだけど登りで利用したいような…。左に穂高、右に槍で最高だろうな~と思って。
何とか天狗池に到着しました。この池に槍ヶ岳が逆さまに写り込むのが素敵で人気スポットの一つです。みんなの写真で見ているとの色合いが違う。それもそのはず、山の午後はとっくに過ぎており、山小屋についていたい時間をすぎていたのです。僕たちはこの日、お天気が良いことを理由についつい欲張ってしまいましたが、山での過ごし方のルールをだいぶ無視した結果となり、「時間を決めて行動する」「なおかつその行動を前倒しする」ことの意味だとか必要性を身をもって体験した日となりました。
いつまでものんびりする僕たちをせかすかのように、槍の山頂には雲がたちこめ、追いかけられるように天狗池を後に。たった一日で、(雪で破損しないように)分岐の看板が撤去されており、ずいぶん印象が変わったところもありました。水俣乗越を過ぎたあたりで、小さな落石なのでしょうか?カラカラと1分近く小石が滝のように流れ、崖の途中に熊でもいるのかと一瞬ビビりましたが、石が自然に落ちてきただけのようだったけど、緊張体験。
この日は感動もいっぱいでしたが、今後の山行のために大きな反省点も多い一日でした。北アルプスから帰ってきて、色々な山の本を読めば読むほど、「あちゃー」と思う毎日。ですが、いろんな経験を教訓にし、安全で無理のない自分達の目的にあった山行を目指していこうという気持ちが強く芽生えた一日でもありました。
目を閉じると、真っ白な砂礫の山と青空の景色がまぶたの裏に鮮やかに浮かぶのを感じながら、最高の幸せを感じた4日目となりました。いよいよあと1日!






























