岡山市南部と玉野市にまたがる備南地域で、特産「千両ナス」の新
品種の導入が進んでいます。ハウス栽培で必須だったホルモン処理
をしなくても実が成長するのが特徴で、作業員負担を軽減できると
して、JA岡山備南施設茄子部会(58戸)が栽培を推奨。新品種に切
り替える部会員が増えており、課題だった人手不足の進行に歯止めを
かける効果が期待されています。
ナスが実をつけるには通常蜂などによって受粉する必要があるが、同
部会で行うハウス栽培は密閉空間のため、代わりに育成を促すホルモ
ン剤を開花期に散布しています。ただ、ホルモン処理は花一つ一つに
しなければならっず、散布時期もほぼ年中続くため、負担を強いられ
ていました。
新品種は受粉なしで実が大きくなる「単為結果性」で、ホルモン処理
が不要。それにより、栽培工程全体の労働力の1割以上を削減できると
いう。一方、味や見た目は従来品種と同じで、産地のブランド力も維
持できます。
栽培は同部会の有志が数年間試行した後、2022年度に5戸が本格的に
スタート。収量や品質に問題がないか確かめた上で、他の部会員にも
導入を呼び掛けました。24年度は22戸が手がけ、部会全体の4割近く
まで広がっています。
備南地域では米麦栽培と両立するナス農家が多く、地元のJA岡山備南
営農センター(岡山市南区北七区)は「麦刈りや田植えに追われる時
期は作業に余裕がなくなるため、負担軽減の効果は大きい」としてい
ます。
新品種は京都市の種苗メーカーが開発し、現在は試験番号から「TNA
-198」と呼ばれています。同部会は「千両」の名称を冠した品種名
で登録するようにメーカー側に要望しているといわれます。