厚さはわずか0・03ミリ.ティッシュペーパーより薄く、光が透けて見

 

える。津山市上横野地区の県郷土伝統的工芸品「横野和紙」。シルク

 

のようなしなやかさを匠の技が生む。

 

「経験と感覚ですよ」と語るのは津山藩の御用紙すきを拝命した上田

 

家7代目の康正さん(津山市上横野)。

(この記事は6月6日の【山陽新聞作州版】からのご紹介記事です)

 

横野和紙は主に金箔を保護する箔合紙(はくあいし)に使われます。

 

上田さんは今年3月、81歳で死去した県重要無形文化財保持者の父・繁

 

男さんの後を継ぎ、日本で唯一,手すきで箔合紙を生産する職人である。

 

上田さんによると、一帯では地区を流れる横野川を利用して奈良時代か

 

ら紙すきが盛んになった。箔合紙生産が始まったのは明治時代中期。昭

 

和50年代まで7軒ほど工場があったが、後継者不足などで上田家を残して

 

廃業したという。

 

活路を求め、1970年代からはがきや名刺,ベンガラ染めの便せんなど民芸

 

品の製造を始めた。約20年前からは高田小(津山市下横野)で手すき和紙

 

の指導に協力。児童は6年間、紙すきの歴史や技術を学び、総仕上げに自分

 

の卒業証書をすきます。

 

「地元に貴重な伝統技術が残っているのが誇らしい」と6年木元美月さん。

 

伝統という思いバトンを託された上田さんは「先人が受け継いだ技術を途絶

 

えさせてはならない」と言い切りました。