「売り上げはこの1年で35~50%も減った。皆、首を絞められてい

 

る状況で、何とかしてもらいたい」

 

岡山県備前市が住民や事業者を交えて公共交通の在り方を話し合う

 

2月22日の会合で、地元タクシー協会代表の小野一嘉さんは業界の

 

窮状を訴えました。

 

怒りの矛先を向けたのは、市が昨春にスタートさせたデマンド(予

 

約型乗り合い)交通だ。車を持たないお年寄りらの生活の足として、

 

自宅から病院やスーパーまで「ドア・ツー・ドア」で送迎する、全

 

10小学校区に1台ずつ装備され1回200円で利用できる、マイナンバ

 

ーカードを提示すれば無償ーといったメリットがあり、月間千人前

 

後が安定的に利用している。

 

しかし、地元タクシー会社はたまらない。一部の会社はデマンド交

 

通を受託して”副収入”を得たものの、本業の減収は避けられない。

 

そんな状況もあってか、4月には市内7社のうち2社が廃業に追い込

 

まれた。

 

岡山をはじめ全国で導入が進むデマンド交通だが、地域によっては

 

地元タクシーの営業を阻害しかねないという懸念が付きまとう。

 

山陽新聞社が2,3月に岡山県内の全27市町村に実施した公共交通の

 

アンケートによると、20市町村がデマンド交通の導入実績があると

 

回答。残り7市町村は未導入で、うち浅口市、笠岡市、里庄町、西

 

粟倉村は「民業圧迫への懸念」を理由に挙げました。

 

そのため、デマンドを導入した自治体でも地元タクシー会社に配慮

 

し、あえてサービスを抑えているケースが目立つ。

 

津山市はタクシーの利用が多い市中心部を運行エリアから外してい

 

るほか、予約は利用の前日までに限定し、当日でも呼び出し可能な

 

タクシーとのすみわけを図る。「利用者には申し訳ないが、タクシ

 

ーも貴重な交通手段であり、共存共栄にはやむを得ない」と市職員

 

は悩ましい胸の内を明かします。

 

備前市は運行エリアを各小学校区に限定し、午前8時半から午後3時

 

だった運行時間もこの4月から正午までに短縮した。市民からは運行

 

エリアや時間の拡大を求める声も上がるが、「事業者の経営事情を考

 

えると、そう簡単にはいかない」と担当職員は言う。

 

里庄町は民業圧迫を避けるため、デマンド交通を導入せず、タクシー

 

を利用しやすくしています。

 

昨年4月から、運転免許を持たない75歳以上の高齢者にタクシーの割

 

引券を配っている。1回500円で月5枚まで使える。昨年6月には対象

 

を妊婦にも広げ、定期健診などで病院に通いやすくした。

 

笠岡市と浅口市に挟まれた同町では、通院や買い物で両市に出向く町

 

民が多い。デマンドでの移動は基本的に町内に限られるのに対し、タ

 

クシーにはその制限がないことから、高齢者への配布分は7割が利用さ

 

れるほど好評といいます。(以下略)