コストを減らすために中古電車を安く買う。乗客減に苦しむ地方鉄道の

 

多くが、そんな消極策をやむなく取ってきた。しかし、富山地方鉄道(富

 

山市)はそこから一歩踏み出し踏み出し、かっての名車両の力で都会の鉄

 

オレンジ色と赤色で鮮やかに塗られた2階建ての車両が、白く雪化粧した

 

道ファンを呼び込もうと一石二鳥を狙っています。

立(この記事は2014年2月7日の【朝日新聞・経済面】からの回顧記事です)

 

立山連峰の3千㍍級の山々をバックに疾走する。京阪電気鉄道(大阪市)から

 

富山電気鉄道に移籍してきた「ダブルデッカー」だ。ダブルデッカーは1995

 

年に誕生した2階建て車両。2階席からの眺望もあり「ダブルデッカーが来

 

るまでホームで待ち続けるお客さんが多かった(京阪)ほどの人気だった

 

が、2013年3月に引退した。その人気に目を付けた富山地鉄が購入。2013

 

年8月、観光特急「ダブルデッカーエキスプレス」としてデビューさせた。 

 

ダブルデッカーの登場とともに、沿線に撮影に訪れる鉄道ファンの自家用車

 

の中に関西方面のナンバーが目立つようになった。富山地鉄を40年間追い続

 

ける石黒俊夫さん(富山県立山町)は「(富山)地鉄が県外でも話題になっ

 

ているようで、地元としてもうれしい」と驚き半分で話す。

 

96年に購入した西武鉄道(埼玉県所沢市)の特急レッドアロー号は「アルプ

 

スエキスプレス」として2012年に刷新。九州新幹線のデザインなどでっ有名

 

な工業デザイナーの水戸岡鋭治さんが,監修し、温かみのある木目調の内装が

 

人気だ。

 

「都会の車両は、元からファンがいて話題になりやすいので魅力的だ。中古

 

車両を観光資源にして県外客を呼び込みたい」。富山地鉄の稲田祐滋専務は、

 

あと1年余りと迫る北陸新幹線の開業が一つの好機になると意気込む。

 

国土交通省によると、全国の地域鉄道91社のうち69社で2012年度、鉄道事

 

業が経常赤字だった。富山地鉄も4億6千万円と6年連続の経常赤字。中古車

 

両に目を付けたのはまず、コスト削減の理由からだった。

 

富山地鉄がこれまでに京阪などから買った約30両は1両辺り1千万弱。数億

 

円かかる新車に比べて1割以下の出費ですむ。

 

ほかの地方鉄道でも大手私鉄から中古車両を買う動きはある。富士急行(山

 

梨県富士吉田市)は、2012年3月に引退した小田急電鉄⁽東京)のロマンス

 

カー20000形を購入。高松琴平電気鉄道(高松市)や長野電鉄(長野市)も

 

大手私鉄の中古を使う。

 

富山地鉄がユニークなのは「お下がり」のイメージを逆手にとって、かって

 

のファンを都会から積極的に招こうとしている点だ。

 

交通評論家で亜細亜大学講師の佐藤信之さんさんは「話題作りとして、前向

 

きな買い物だ」と評価する。

 

ただ、悩みもある。走っている電車の写真は、乗っていては撮れない。そこ

 

で、富山地鉄では2013年秋にはダブルデッカーの試乗イベントを開いた。催

 

しは盛況で富山地鉄は手応えを感じているという。元観光庁参事官の矢ケ崎

 

紀子首都大学東京特任准教授は「いろんなしかけを続け、アピールし続ける

 

ことが大事だ」と指摘する。