きらめく鉱石は太古からの贈り物です.「採石直後は、もっと鮮やかな紫

 

色なんですよ」。岡山市の自宅で岡山大の草地功名誉教授(鉱物学)が、

 

リンゴ大の石を手に取りながら教えてくれました。

 

ごつごつとした石の表面には、濃紺の小さな結晶が無数に散らばって

 

いました。光が反射して、どの角度から見ても輝いています。

 (この記事は2月20日の【山陽新聞・吉備を還る】からの紹介です)

 

採掘場所は、吹屋往来から西に外れた高梁市備中町の布賀鉱山。

 

世界中を探しても、ここでしか見つからない石は、学術書や教科書に

 

も一切載っておらず、1986年、国際的に新鉱物と認定されました。

 

その名は”逸見石”です。

 

発見は、研究者の情熱の証しです。高梁や新見の台地には石灰岩

 

層が広がります。3億年ほど前に生まれ、プレート作用で南海から

 

運ばれました。こlの土壌に高温のマグマが流れ込み、特殊な化学

 

反応を引き起こしました。石灰石とマグマの成分が結び付くという全

 

国的にも珍しい現象から、多くの新しい鉱物が誕生しました。

 

70年代、珍しい医師が採れるとの情報を得て、逸見吉之助・岡山大

 

名誉教授(97年死去)と、助手を務めていた草地さんは一緒に布賀

 

鉱山を調査しました。持ち帰ったサンプルを調べてみたが、結晶構造

 

や組成がこれまで見つかった石とは一致しません。

 

「どの文献にも同じ分析結果は乗っていませんでした。『これはもしや』

 

と逸見先生と興奮したのを覚えています」と草地さんは振り返ります。

 

最初に見つけた新しい石は備中石と名付けました。以降、他の研究者が

 

砕石し、逸見さんの名前に由来する逸見石をはじめ、布賀石、草地鉱な

 

ど、この地で確認された新しい鉱物は計13種類に上り、国内最多を誇り

 

ます。

 

認定から35年―。昨秋、逸見石の新たな”能力”に注目が集まりました。

 

新鉱物の特性を探っていた東北大や岡山大などのチームが、逸見石の

 

結晶構造を改めて調べたところ、次世代の超高速計算機と期待さrふぇる

 

量子コンピューターに応用できる可能性があることが分かったのです。

 

(中略)逸見石は、未来を開く可能性を持った奇跡の石です。