診察室を出て、処置室へ移動しました。
点滴のルートを取るため、息子だけ奥のスペースへ行きました。
しばらくすると、
「全然痛くなかったわ!」
と笑いながら戻ってきました。
病棟の準備が整うまで、しばらく処置室で待つことになりました。
息子と私は先程の身体測定の結果を見て、
「2㎏しか減ってなかったね~」
と笑っていました。
のんびりしていると、さっきの先生2人と看護師さんが来ました。
そして女性の先生(主治医となったO先生)が、
「息子くん!これは今日から君の相棒です!」
と言って黄色い箱を渡しました。
『ベイブレード』と言うアニメとおもちゃが好きだった息子は、『相棒!』と言う言葉に目を輝かせてその箱を受け取りました。
もちろんそれはおもちゃのベイブレードではなく、リブレだったのですが…
「お母さん、これはこれから息子くんの体に装着して、息子くんの血糖値をコントロールするための相棒となります。
最初なので、お母さんが着けてあげてください」
と言われました。
O先生に指導されながら、無事にリブレのセンサーを腕に装着しました。
『ガチャン!』
と言う音は今でも苦手ですが、息子の相棒として愛着を持っています。
リブレが装着し終わると、今度は病棟に移動。
担当の看護師さんが、
「後ほど先生から詳しい説明があるので、それまでお待ちください」
と言いました。
夕食の時間になり、息子は初の病院食をペロリと完食。
「さて、テレビでも!」と思っていると、詳しい説明のため個室に呼ばれました。
そこで息子に対して分かりやすく、
「1型糖尿病がどんな病気で、
これからどんな生活になるのか」
を丁寧に説明してくれました。
じっと説明を聞きながら資料を見ていた息子。
説明が終わった頃には19時を過ぎていました。
O先生が、
「息子くん!分からないことがあったら、
いつでも先生に聞いてね!」
と言うと、息子は無言で涙をポロポロとこぼしました。
元々余計なことは言わない性格の息子。
O先生が一生懸命涙の理由を尋ねますが、息子は涙を流すだけでした。
私は息子の涙の理由を知っていました。
そして申し訳ない気持ちで先生にこう言ったのです。
「金曜日の夕方に、いつも見ていたEテレの番組が見られなかったのが悲しいんです…」
と。
一瞬の間があり、先生たちが笑いました。
そしてO先生がこう言いました。
「息子くん!これから先、1型糖尿病だからと言って何かを我慢する必要はないんだよ!
見たいテレビがあったら見てもいいし、
食べたいものがあったら食べてもいい!
だけど、我慢することだけはだめだよ!」
息子は涙を拭きながら何度もうなずいていました。
息子の相棒となって2日目のリブレ。
入院中は寝る時も握りしめて寝ていた息子。
朝起きると持っていたはずのリブレが、いつもちゃんと机の上に置いてあることを不思議がっていました。
「それはね、夜に看護師さんが血糖値をリブレで測定していたからだよ」
看護師さん、毎回リブレを探すの大変だっただろうなぁ…