米財務長官であるガイトナーが9月16日の欧州財務相会合に出席し、欧州危機を終息させるためにEFSFの強化、つまりレバレッジの活用を提言した。
ユーロ圏の要人たちは、いわゆる部外者であるアメリカのガイトナー長官の意見を突き放し、塩をまいて追い払う形となった。

しかし、その後のユーロ圏からEFSFのレバレッジ活用案が次々と飛び出してきて僕はびっくりした。

そんなことはどうでもいいのだが、EFSFのレバレッジ活用とはなんなのか。

現状、EFSFは実質2500億ユーロの融資能力をもつ。
これにレバレッジをかけて例えば2兆ユーロの能力にしてしまおうわけだ。

レバレッジにはそんな魔法のような力がある。
日本の個人投資家の間で流行っているFXも、レバレッジを使って少ない資金で大きな利益をあげよう、などと謳っている。

レバレッジ、レバレッジと何気なく使っているが、一体どういう仕組みで2500億ユーロを2兆ユーロにできるのだろうか。
よくレバレッジ10倍とか50倍とか言うけど、そんな10倍というボタンを押すだけかのような簡単な作業でいきなり資金が10倍に増えるのだろうか。


レバレッジとは、そもそも「他人資本を使うこと」なのだ。
別にボタンを押せばお金が10倍に増えるわけではなく、単純に他の誰かからお金を借りているだけ。

僕が今100万円持ってるとして、友達から100万円借りて事業を行えばレバレッジ2倍ということだ。

100万円で10万円の利益が上がれば利益率は10%。同じ事業を友達から借りた100万円を足して200万円で行えば利益は20万円出ることになる。でも僕のお金は100万円しか使っていないので、100万円に対して20万円の利益が出たことになる、つまり利益率は20%に上がる。少ないお金で多くの利益を稼いだことになる。

もちろんリスクも大きくなる。
200万円で事業を行い失敗した時、100万円で事業を行っていた時よりも多額の損失が発生する。100万円以上の損失、例えば130万円の損失が出れば追加で30万円自己資本を出さなければいけない。

レバレッジとは諸刃の剣のようなものなんだ。
EFSFとは話題がそれるが(実はもともとEFSFを主にしたエントリーではないが…)、レバレッジが諸刃の刃なのはたしかだが、それでもFXというのは大変魅力的なサービスだと思う。

レバレッジといえばFXを連想するほどFXは浸透してきたが、実はもっと身近で日本人の多くが利用しているサービスの中にレバレッジは使われている。

それは住宅ローンである。

多くの日本人は頭金500万円しか払わないのに3,000万円の住宅を購入している。
これはレバレッジ6倍の投資と同じ効果だ。

しかし、住宅ローンとFXの違いは、使う他人資本に金利がつくかつかないかという点である。
住宅ローンの場合、自己資本以外の部分には金利がついてしまう。しかもその金利にもマジックが隠されている(過去のエントリーを参照)。

しかし、FXでレバレッジを使う場合、たいていの場合他人資本の部分に金利はつかない(取引手数料をとる業者も一部あるかもしれない)。
つまり、これは無利子でお金を借りていることと同じ効果だ。
もちろん借りたお金は為替取引をすること以外に使うことはできないのだが、今の日本において無利子でお金を借りることができるサービスは、奨学金とクレジットカードとFXくらいだろう。

無利子でお金を借りられるサービスというのは、どんどん活用すべきだと個人的には考えている。

少し話はそれてしまったが、レバレッジとは自分のお金が数倍に増えるわけではなく、単に他人のお金を使わせてもらう、という単純な仕組みである。
利益が出てるうちは魔法の杖のようだが、損が出始めると雪だるま式に損失が膨らんでしまう。

(最後にEFSFの話をさらっと。わかる人だけ読んでください。)
同じ国の中の困ってる人を助けるのにレバレッジを活用した基金(米国のTARP)を使うことはできても、別の国の困ってる人を助けるためにレバレッジを活用(EUのEFSF)するとなると、損失が出たときのリスクを考えてしまいなかなか踏み込めないのはすごくよくわかる。

EFSFのレバレッジとは、その仕組みと可能性


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