自分が属する業界の「簡単に利益を出す仕組み」を書くことは少々気がひけるが、別に計算すれば誰でもわかることだから書いてみよう。

銀行は個人の客に対しては住宅ローンを組ませることを最終目的にしている(と言われている)。個人客に対してただ普通口座を作ってもらって数百万の預金をしてもらうだけでは全国各地にあるATMのコストを賄えるはずもないので、当然といえば当然の話である。

この住宅ローンというのは、とことん銀行が儲かる仕組みになっているのだ。その仕組みをちらっと簡単に説明しようと思う。
※ 僕は住宅ローンを実際に組んだことはないし販売したこともないので、内容と事実に乖離があるかもしれません。悪しからず。

まず初めに、住宅ローンには2つの返済方法があるのはご存知だろうか。
「元利均等法」と「元金均等法」である。

元利均等法:毎月の支払額(元本+利息)が一定になる方式。

元金均等法:毎月一定の元本と、それに利息を上乗せた支払額を払う方式。

総支払額を比較すると、元金均等法の方が元利均等法よりも少なくなる。

これだけの情報であれば、ほぼ100%の人が元金均等法を選択するだろう。
しかし、実際は元利均等法を選ぶ人が一般的となっている。
その理由は、「住宅ローンの税額控除の額は年末のローン残高の1%」というルールがあるからだ。
それに、元利均等法の方が毎月の支払額が一定になるので計算しやすい、などの宣伝文句を使って銀行員は元利均等法を勧めてくるに違いない。

ここまでで、住宅ローンは「元利均等法」が選択されるケースが国の税体制や銀行の都合で多いということを押さえてもらって、次はこのエントリーの本題である元利均等法の元本の減り方を見ていく。

最初に
ローン残高(元本):y 毎月の支払額:p 利率:r 支払い回数:n 
として、

ローン残高yと毎月の支払額pは以下の計算式で求めることができる。
(詳細の計算仮定を説明するとややアカデミックになってしまうので省略。)

photo:01



photo:02



※ y(0)とは0回目の支払いが終わった後のローン残高、つまり借入総額である。
※ y(n)とはn回目の支払いが終わった後のローン残高。


さて、この計算式を使って次のケース(一般的と思われる住宅ローンのケース)についてあることを考えてみよう。

借入金額:3000万円
金利:3%
年数:30年

いきなり核心をついてしまうが、このケースで10年間ローンを返済していったとして、10年後のローン残高を計算してみよう(nには10年*12ヶ月の120を代入、rは3%/100/12ヶ月の0.0025を代入して計算する)。

計算してみると10年後のローン残高は2,280.6万円という計算結果になる。

ここで疑問を感じてほしい。

10年間一生懸命ローンを返済したということは、返済期間は1/3過ぎたということになる。
しかしローン残高は2,280.6万円ある。当初借り入れたのは3,000万円だから、1/4程度しか元本を返済していないわけだ。

金利というのは元本にかかっていくもの。
つまり、お金を借りる方としては元本を早めに減らしていきたいのに、現状のわが国の住宅ローンでは元本の減り方が緩慢という仕組みになっている。

加えて、(僕はあまり知らないが)最近では当初数年間の金利が非常に低くて後に金利がジャンプアップする住宅ローンの広告をよく見かける。

いくら当初数年間の金利が低くても、返しているのは元本部分ではなく利息部分ということになる。
元本の減り方は緩慢なので、銀行としては後々に金利をジャンプアップさせてもたんまり金利収入が得られる仕組みになっているわけだ。


最後にいくつか補足。
このエントリーは、住宅を買うことに否定的な意見を述べているわけではなく、我が国の住宅ローンは借りる方に不利な仕組みになっている、といことが主旨です。

銀行というのは住宅ローン以外にも「簡単に利益を出せる仕組み」というのがたくさんあります。
また、銀行以外にも日本には様々な業界で、消費者の無知を利用した簡単に儲かる仕組みが存在しています。
多くの場合、それは様々な規制によって守られて(既得権益)いるわけだが、それを打ち崩すには、今までの常識に囚われずに正しい知識をつけること、つまり正しい教育が必要、というのが僕の考えです。





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