スナップ写真に人物が写り込むことについて | カメラの自由研究

カメラの自由研究

東ドイツ製カメラの備忘録の予定でしたが、所有するカメラの個人的意見の方が多くなりました。

はじめに

 ここでは、こう考えている人もいると言う事を知ってもらいためにやや極端に書いています。必ずしもこうあるべきと言うつもりもありません。それを汲んで読物としてお読みください。



1 問題の所在

 スナップ写真、特に街中で撮影する場合、通行人等撮影者以外の人(以下、「被撮影者」といいます。)の容貌が写り込む事があります。おそらく、多くの被撮影者は知らない人から突然カメラを向けられたら不快に思うと思われます。このような被撮影者の心情を、スナップ写真を撮影する際どのように考慮するのかが問題意識です。



2 被撮影者の肖像権について


⑴  肖像権

 肖像権、一般には人権の一であるプライバシー権の一部と理解されているようです。昔から言われている有名人云々は肖像権の財産権の側面だと思われます。別途人格権的側面もあると言われていますね。


⑵  明文の規定

 確かに肖像権について法令上の明文の規定は無いですね。しかし、肖像権を含む権利と言われていて同様に明文の規定が無いプライバシー権を否定する人は現代ではいないと思います。


⑶  憲法解釈

 逆に明文で人権を定める憲法も、各条文を解釈で裁判規範性・法規範性の有無及びプログラム規定に分類しますね。


⑷  小括

 以上から、明文で規定されているから絶対ダメ、明文で規定されていないから絶対OKというものではないと思われます。



3 撮影者の表現の自由との関係


⑴  対立関係

 スナップ写真の場合は、撮影者の表現の自由vs被撮影者の肖像権(プライバシー権)、換言すると人権vs人権となるかと思います。

 このへんは憲法の古典的論点であり、憲法の基本書でたくさんの学者の先生方が買いているので、そちらにお譲りしたいと思います。


⑵  小括

 撮影者が、自分には表現の自由があると言って、被撮影者の事(人権)を全く考えないのはいかがなものでしょうか?これではレイプするのと同じに思えるのは私だけでしょうか?



4 私見(かなり極論を書いてみました)


⑴ 被撮影者の心理

 冒頭に書いたように、知らない人にカメラを向けられたら不快に思いカメラから逃げる人が多いと思います。なぜなら、どこで何に使われるかわからないですし、今の時代は一瞬で全世界に拡散されて、かつ、完全に回収する事は不可能ですから。


⑵  被撮影者からの主張の可能性

 肖像権を含むプライバシー権とは、自己の情報をコントロールする権利であると記憶しています。なので、後ろ姿でも被撮影者はプライバシー権侵害を主張出来る可能性はあると思います。


⑶  撮影者側の主張に対する反論

 撮影者の中には、今まで群衆の写真を撮って発表してもクレームを受けた事が無いと言う方がいるかもしれません。しかしながら、群衆の中の人々が自分の写っている写真が公表されている事を知る機会がどれだけの確率であったのでしょうか?殆どの場合は自分の風貌が公衆に晒されている事を知らないからクレームにもなっていないのではないでしょか?


⑷  自動車関係のSNSの現状

 自動車関係のSNSでは、ナンバープレートを隠すのが一般的です。昔は陸運局でナンバーがわかれば誰でも所有者を確認出来ましたが、今はダメです。にも関わらずナンバーを伏せるのは、自己の情報が片鱗でも不特定多数に晒されるのを嫌うのが一般だからだと思われます。また、ナンバーがわかれば、少なくとも身の回りの人には個人を特定される可能性がある事も理由に挙げられます。


⑸  外国の状況

 確かにアメリカではスナップで見ず知らずの人の容貌を撮って作品としている人がいるようですね。しかしながら、アメリカで許されるから日本でも許されるとは当然ながらならないと思います。


⑹  結論

 そもそも法律とは、人が生活する上で最低限守らなくてはならないことを文書化したものですから、法律に書いていなくてもしてはいけないことはたくさんあります。ですから、撮影者は被撮影者の心情を理解して、人として許される範囲内で撮影する必要があると思います。

 スナップ写真を撮影する場面に引き直すと、原則事前、最低限事後に被撮影者に同意を得る事が、後々トラブルにならないためには望ましいと思われます。