ニコン F3P | カメラの自由研究

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東ドイツ製カメラの備忘録の予定でしたが、所有するカメラの個人的意見の方が多くなりました。

1 概括

 言わずと知れた1983年発売の「報道限定用」機種です。

 諸元は次のとおりです。

・外観 ブラック塗装

・大きさ 約148.5mm(幅)×118.5mm(高さ)×69mm(奥行)

・重量 約780g(ボディのみ)

・基本的な仕様はニコンF3ハイアイポイント(以下、「F3HP」といいます。)と同様

・標準小売価格

 158,300円(標準裏蓋)

 164,000円(MF-6B付)


⑴  重量

 F3HPの重量は745g(ボディのみ)でしたから、F3Pは35g増加しています。後述する変更点に起因するものと考えられます。


⑵  寸法

 F3HPは約148.5×101.5×69mmですから、F3Pとは幅と奥行は同じですが、高さが17mm高くなっています。


⑶  価格

 F3HPは1982年3月発売で、当時の標準価格は¥136,000でしたから、F3Pとの価格差は¥22,300でした。

 また、MD-4用カメラバックMF-6Bは¥10,000でしたから、MF-6B付F3Pとの価格差¥5,700はお得感が高いですね。なお、MF-6Bとは、フイルムの巻き戻し自動停止機構がついた裏蓋で、フイルムのリーダー部をパトローネに巻き込まないよう、フイルムの巻き戻しの自動停止機構がついています。


(4) カタログ

 A4一枚ペラで白黒で印刷されたカタログ(というよりチラシに近いかもしれません。)が作成されていたようです。




2 F3HPとの比較

 私のF3Pは1990年5月に新品購入したものです。この個体に同梱されていた説明書(?)記載の「変更項目」等を順を追って検証したいと思います。なお、ここに書かれているとおり、F3HPの仕様を一部変更したものがF3Pであるため、比較対象はF3HPとします。


 画像は、左側がF3HP、右側がF3Pです。



変更項目


⑴  ファインダーペンタ部にチタン材を使用し強度を増加。(塗装も変更されています。)

 ファインダーのペンタ部のカバーをチタン材を使用した部品に交換しています。

⑵  ファインダーペンタ部にフラッシュ接点及びレディライト接点付きアクセサリーシューを追加装備。

 F3HPの場合、巻き戻しクランク基部に独自規格のアクセサリーシューを設置していてJIS規格のものは使用出来ませんが、ファインダーの上にJIS規格のアクセサリーシューを増設しています。

 また、F3HPの場合、ファインダー・ボディー間の電気接点は存在しませんが、アクセサリーシューを増設したことから接点も増設されていて、所謂ホットシューとなっています。

 なお、プロ向けにシューをファインダー上に後付けする改造が行われていましたが、その場合は、ファインダー・ボディー間の電気接点が存在しない、所謂コールドシューとなっていました。



⑶  ファインダースクリーンにB型(マット式)を標準装備。

 F3HPはスプリットマイクロ式(K型)が標準ですが、マット式(B型)に変更されています。


⑷  モータードライブMD-4使用時の自動巻き戻しの際、巻き戻し終了時に自動停止されるカメラバックMF-6Bを標準装備。(通常の裏ぶた付きの機種もあります。)


⑸  レリーズロック機構をメカニカルロック機構に変更。レリーズロックは、レバーを赤いマークの位置にセットしますと、ロックが解除されます。)

 F3HPの場合、電気的電源レバーが巻上げレバーの根本にありますが、巻上げレバーの上にメカニカルロックレバーに変更の上移設しています。この結果、シャッタボタンの位置が高くなっています。



⑹  フィルムカウンター窓の形状を丸形に変更。

⑺  フィルムカウンターの色を白に変更。

 F3HPの場合、フィルムカウンターの窓が三角形ですが、丸型に変更されています。

 また、F3HPの場合、枚数を表す数字と点は青色(点の内、12、20、24、36は白色)、指標は赤色ですが(左側)、枚数を表す数字と点は白色(点の内、12、20、24、36は赤色)、指標は赤色(中央がF3/T、右側がF3P)とF3/Tと同じ部品が使われています。


⑻  フィルム感度(ASA/ISO)目盛表示窓にカバーを装備。

 F3HPの場合、フィルム感度目盛がむき出しとなっていますが、防滴用の透明のカバーが取り付けられています。


⑼  シャッタースピードダイヤル及びシャッターボタンの高さを変更

 操作性向上のため、シャッタースピードダイヤルの位置が高くなっています。

 また、シャッタースピードダイヤル中央のロックボタンの高さが低くなり、基部にOリングを入れるための膨らみが無くなっています。シャッターダイヤルを回転させるトルクが重くしてあるとする記事も見ますが、私には違いがわかりませんでした。



ご注意


(10) スピードライト撮影の際ファインダーペンタ部のアクセサリーシューにスピードライトを装着してのTTL自動調光撮影は行えません。


(11) AFファインダーDX-1は装着できません。

 ファインダーとシャッタースピードダイヤルの距離が近すぎて、シャッタースピードダイヤルが回せなくなるためだと考えられます。


次の項目は装備されていません。


(12) フィルムカウンターが1を示すまでのシャッタースピード固定機構

 F3HPの場合、フィルムを装填した場合、フィルムカウンターが1になるまでシャッタースピードが1/80秒に固定されますが、フィルムカウンターの1を伝えるリード線が省略されている結果、1/80秒に固定されなくなります。


(13) 多重露光レバー

 F3HPの場合、多重露光レバーが巻上げレバーの隣りにありますが、撤去されています。

 これは、想定しているF3Pの購買層は多重露光機能が不要であると考えられることと、多重露光レバーが不意にストラップに引っかかり誤操作を起こすことを予防するためとも考えられます。


(14) セルフタイマーレバー及びセルフタイマー作動表示ランプ


(15) 裏ぶたロックレバー(裏ぶたは巻き戻しノブを引き上げれば開きます。)

 F3HPの場合、ロックレバーを左にスライドさせながら巻き戻しクランクを上に引き上げると裏ぶたを開くことが出来ます。

 これは、巻き戻しの軸の部品の形状を変更することでロック機構が省略されていますが、不用意に裏蓋が開いてしまわないようF3HPより巻き戻しクランクを引き上げるのにトルクが必要になっている。



(16) ケーブルレリーズ用ねじこみ穴

 防滴対策のため、シャッターボタン自体をケーブルレリーズ孔のないタイプに交換の上、シャッターボタンの周りの部品をゴムを組み込んだものに変更されています。

 画像は⑸をご覧ください。


(17) アイピースシャッター及びアイピースシャッターレバー

 F3HPの場合、接眼部に光が逆入することを防止するためにアイピースシャッターが設置されていますが、この機構が省略されて蓋がされています。



(18) その他(内部の防滴処理)

 F3/Tと同等の防滴処理が内部の随所にされているようです。


(19) その他(シリアルナンバー)

 シリアルナンバーの頭に「P」を追加刻印しています。

 画像は(17)をご覧ください。

(20) その他(化粧箱)

 ニコンでは「元箱」とは言わずに「化粧箱」と言っていますね。F3の化粧箱は、箱の右下に丸い赤地に白色では「P」と書かれたシールが貼られているだけで、他は違いはありません。




更新履歴
2024.5.29 カタログ画像を追加。