『BLOOD MOON』は、『COYOTE』、『ZOOEY』に続くコヨーテバンド共作の3枚目のアルバムです。
『COYOTE』は生存、『ZOOEY』は愛がテーマだとすると、『BLOOD MOON』は警鐘がふさわしいと思います。
本作では現代の闇を照らしたかのようなメッセージ性溢れた楽曲で構成されています。
アルバムタイトル曲の『紅い月』は、愛や自由を求めてきたが、夢に破れ全て壊れてしまった主人公の物語です。
佐野さんは傷心の主人公に「心を偽らないで もう一度好きなように踊ろう もう泣かないで」と語りかけます。
年を重ねると厳しい現実に打ちのめされ生きる希望を失うことも少なくないと思います。
空に浮かんだ紅い月に主人公の赤く滲んだ涙と重ねてしまうのは私だけだろうか。
『境界線』は、名曲『Young Bloods』を彷彿させる疾走感のあるロックナンバーです。
日常生活では大小さまざまな境界線が存在し我々を苦しめています。
境界線を超えた先には今までの自分とは違った微笑んでいる自分がいるはず。
そう信じて明日を生きていきたいですね。
『キャビアとキャピタリズム』は、資本主義社会にメスを入れた強烈なメッセージソングです。
社会では何かが起こると誰かのせいにして責任逃れをする腐敗体質が蔓延している気がしてなりません。
「でも誰がマトモに聞くもんか 結局誰かの都合のせいさ」のフレーズは特に気に入っていて、何度も口ずさんでしまいます。
まくしたてるようなヴォーカルがスカッと心に響きます。
『優しい闇』は、あてのない未来について唄った曲です。
約束された未来なんてどこにもないし、帰り道だってどこにも見当たらない。
それでも、どんな時も君を想っていると歌っています。
運命は誰に対しても傲慢で残酷なのです。
佐野さんの今回のアルバムは胸にズッシリ突き刺さります。
一言で言うなら、「良薬は口に苦し」がピッタリだと思います。
重くて深いが、じわじわと心の中に浸透して行くアルバムです。