【小説】野良犬に手を噛まれた 5 | 箱庭の空

箱庭の空

小さな世界。

 上の空のまま食べたチーズは何だか高級品だったと思い出す。一応、出てきた時に説明があった。勿体ない。


「基本、『戦闘機』乗りは単座で、例外的に複座の場合もあるが、どちらにしても支援と補助を必要とする。例えば、地上を目視で偵察や爆撃をする時とかな」


 突然、Bは饒舌に喋り始めた。無口で声なく笑うだけの男だが、ごくたまにこういうことがある。

 酒とつまみが合っていたのだろうか。困った奴だ。

 ただ、うんと相槌を打つ。


「最近の戦闘機は空を飛ぶだけじゃないけど」


 少し口も挟んでみた。


「そう、その通り。だから戦闘技術に特化して、そのためだけに集中できる、がちがちに調整した人間……いや生物兵器かな……が必要でね」


 それは巷に囁かれる話、奴隷化政策、愚民支配云々と主旨を同じくするであろう。しかし、どうしても与太話で気分良くもないので、Aは好きではない。


「そういうSF的解釈もありだとは思うよ。でもそれがどう花嫁修行と関係するんだよ」


 字義上の意味を超え、いかがわしい感じすらする。