秩父神社の寺社彫刻は、普通の寺社彫刻とは一風変わっています。
ここでは、一枚板に直接彫り込むのではなく、彫ったパーツを題材ごとに切り出し、板に貼り付けて立体感を出すという独特の技法が使われています。
まるで“飛び出す立体看板”のような迫力があり、よく見ると彫刻の影までが動き出すような面白さです。
特に上部に配置された八仙の彫刻は、どれも表情豊かで、今にも動き出しそうな生命感。
首が痛くなるのが難点ですが、見上げているだけでワクワクしてきます。



その八仙の中でも、私が思わず足を止めたのが鉄拐仙人が息を吹きかけて蘇るシーン。
この場面は根付の世界でも人気の題材で、江戸時代の名工・辻が彫った鉄拐仙人は、今でもコレクター垂涎の逸品として知られています。





秩父神社の彫刻を眺めていると、
「寺社彫刻と根付は、スケールは違えど“物語を刻む”という点で同じなんだな」
と改めて感じさせられます。
立体感、色彩、題材の選び方──
秩父神社の彫刻は、ただの装飾ではなく、江戸の職人たちの遊び心と技術が凝縮された“物語の舞台”のようでした。
「公」の寺社彫刻、「私」の根付彫刻──どちらもも好きな僕は、2つの大きな江戸彫刻文化を一度に堪能してしまいました。
そして秩父には、この他にも三峯神社、寶登山神社など、見事な寺社彫刻が点在しています。
彫刻好きにとっては、まさに“聖地巡り”のような楽しさがありますね。

