
最近、おもしろい饅頭根付を入手しました。彫られているのは、武士のような人と町人のような人の二人組。 購入したお店の店主さん曰く、「浮世絵根付だろうとは思うけど、詳しくはわかんないなぁ」とのことでした。
うーん、、、これは一体誰なんだろう?そう思いながらじっと見ていたら、正面にいかつい男の視線が「俺をコレクションに入れてくれ」と熱く語りかけてくるような気がして……つい購入してしまいました。コレクターの妄想力、我ながらヤバいです(汗)。
自宅に持ち帰り、改めてじっくり観察してみると、いくつか気になる特徴がありました。まず、手前の男の髪型がちょっとおかしいんです。頭頂部を剃り上げているのですが、サイドの髪が不自然に横に広がっています。それから、腕にある斑点のような模様……。「なんか君、反社の人ですか?」と言いたくなるような、ただならぬ雰囲気が漂っています。かたや横にいる男は、すまし顔のイケメン系。この対比がめちゃくちゃ気になります。
気になって夜通し調べてみたところ……ついに正体が判明しました!これは歌舞伎の大人気演目『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』。描かれていたのは、主人公の「団七九郎兵衛」と、その相棒「一寸徳兵衛」だったのです!あの不思議な髪型は「団七髪(だんしちばらし)」と呼ばれる彼専用のヘアスタイルで、力強く荒々しい侠客の象徴。そして腕の斑点模様は、彼の背中から腕にある見事な「刺青(彫物)」の表現だったわけです。反社っぽく見えた私の直感も、あながち遠からずでした(笑)。
根付の面白いところは、このように「必ずそれとわかるような記号や持ち物」がどこかに彫り込まれている点です。時には、本人の姿を描かずに小道具だけでその人を表す「留守模様(るすもよう)」という粋な表現が使われることもあります。江戸時代には超人気だった歌舞伎の演目。当時は誰もがひと目で「ああ、団七と徳兵衛の大捕物の場面だな!」と分かる定番の図柄でした。
時代の変化とともに当時の常識が変わってしまうため、現代の私たちには一見難解に見えますが、こうして調べていくと忘れ去られた図柄の背景にあるドラマが鮮やかによみがえってきます。自分で謎を解き明かし、何百年も前の職人の『仕掛け』と時空を超えて繋がることができる。これこそが、根付の尽きない魅力の一つですね。


