
川越氷川神社の本殿が重要文化財に指定され、先日の『美の巨人たち』でも取り上げられていました。
寺社彫刻好きにはおなじみ、名工・島村俊表の代表作。現地で見ると圧巻で、木で作られた作品が生きているように見えます。


俊表の人物像は江戸らしく四頭身でユーモラス。
その造形は、かなり根付に通じるものがあったりして……
掌の中で物語が立ち上がる根付の世界観が、巨大な彫刻になって目の前に現れる感じが好きなんですよね(笑)。


今回の放送で初めて知ったことがありました。
川越まつりの山車と同じモチーフが、本殿の下段に刻まれているという事実です。寺社建築は町内会が資金を出し合って造営するため、
「自分たちの山車の英雄を神社にも刻んでもらう」という粋な発想が生まれたらしい。
普段は玉垣に隠れて見えませんが、隙間から覗くと確かにそのモチーフが刻まれています。



ここで、どうしても触れたいのが 根付との関係。
拝殿を飾る龍や獅子は、町が守りたい“公の象徴”。
祭礼の中心にあり、町の誇りとして掲げられる存在です。


一方で、掌の中でうねり動き出しそうな龍や獅子の根付は、
自分だけが密かに楽しむ“私の守り神”。
同じモチーフなのに、役割も距離感もまったく違うのが面白い。



寺社彫刻が公なら、根付は私。
掌で楽しむ根付と、町のみんなの誇りが共有する寺社彫刻。
関係ないようでいて、実は同じ江戸の美意識を共有しています。
この“スケールの違う同じ世界観”が、僕には堪らない。
川越氷川神社の彫刻群は、町の物語・信仰・誇りを木に刻んだ共同体の立体記憶装置。
そして根付は、個人が掌で楽しむ小さな物語装置。
その二つが静かに響き合う場所として、今回の重要文化財指定は特別な出来事だと思いました。
そのうち、根付にも重要文化財に指定される品が出てくるかもしれませんね(笑)。