🐂偶象斎という謎──牛の根付に導かれて
今年、骨董市で牛の根付を手に入れました。銘は「偶象斎」。初めて目にする銘です。牛の姿は、首を少し傾けた柔らかな造形。足先や尻尾の隙間まで彫り込む精密さ、目には二重象嵌が施され、技術的にも非常に巧みです。手に取った瞬間、ただの可愛らしさではない、職人の意図と技が伝わってくるようなキレキレの牛根付です。
しかし、偶象斎という根付師は、これまで一度も見たことがありません。資料をひと通り調べてみましたが、どこにも記載がない様子。根付の世界では、時折こうした“謎の作家”が突然現れます。
まるで、時代の隙間からひょっこり顔を出すように。誰だよ、この根付師、、、頭が偶象斎ならば、下に〇〇と名前があるはずです。異名探しの探索が始まります。しかし今回の資料からは、出来ませんでした。長いとこ気にして入れば、いつかは出会えるかもしれません。
それにしても、この「偶象斎」、銘からして何か思想的な背景があるのかもしれないですね。「偶象」、象(かたち)に宿る偶然性や、信仰と造形の境界を意識した名なのか──などと勝手に妄想してしまいます。
こういう謎に出会えるのも、根付収集の醍醐味のひとつ。根付との出会いがあり、名前を読むたび、知らない世界が広がっていく。
根付って、ほんとうに最高!!




