手元にある一枚の紙。
「2011夏祭り参加用紙」
紙を持つ手が震えている。
あれは一年前の…
同じ夏祭りで…
その日、旦那はその腕力を買われ搬送係に専念していたので、
奈々氏は子供達を連れて金魚掬いをしたり、たこ焼きを頬ばったりと
旦那が居ないなりに楽しんでいた。
「ビンゴゲームが始まりますよ。」
アナウンスが鳴る。
商品は5キロのお米…当たればどれほど節約になるだろうか。
まあ昨年まで一度も当たった事なんか無いんだけどね、ふふう。
適当にポチポチカードに穴を開けていると気付いた。
斜めの列が完成しそうな予感。
来るべき数字は13。
司会 「次は24番。」
長女・次女「あー。」
小学生男児が米を貰いに行く。一人抜けてしまった!
残るは後2つ。
司会 「次は35番。」
長女・次女「おうー。」
ダメだ…お米さんさようなりー…おや?誰も行かない。
セーフ?
しかし、結構な時間が経っている。
きっとこの会場内はリーチだらけなのだろう。
もし同時に3人以上がビンゴした場合、先に行った2人が抜ける、
そこに入れるか否かで明暗が夏目漱石!
ドキドキドキドキ…まあ当たらないんですよねーこの展開は。
司会 「次は13番。」
ズキューン!きた。ゴルゴ。オーデューク!オー。
無我夢中で走って行く、米を求めて全力疾走。走れ奈々氏。
バックミュージックはロッキーの「エイドリアーン」。
ちゃららーらちゃらちゃらちゃっらららら。
うらっしゃー、先着2名枠に入れたよ!
というか2名だけしか当たりではなかったから必死に走らなくても良かったよ…
隣で喜んでいるもう一人の当選者の男の子を見て、
こんな無邪気な子供を差し置いて米を奪い取ろうとしていたのか、
いい歳した大人が…。
と猛省モードに入る。
係員が数字の確認をする、これで間違えていたら恥ずかしい。
というより…長女と次女は…置いてきた…。
このビンゴした喜びを分かち合いながら3人でカードを渡せば思い出になっただろうに、
米に欲を掻いて、子供を置いて走ってきた、グリコのポーズで。
大人としてこの態度はいかがなものでしょうか!
と段々と情けない気持ちになってきたところに、
係員 「当たりです、おめでとう!」
手渡されるお米。
子供達が待つ場所への帰路はうつむきながら顔を真っ赤にしつつ
米の重みを色々な意味で感じながら…歩いた。今度は走らなかった。
奈々氏「ごめんね。」
長女・次女「ママすごいじゃん!わーいお米だー!」
奈々氏「置いてけぼりですまなかった。」
長女・次女「気にしていないよー。」
ありがとうありがとう。
旦那が通りがかる。
「え?凄い物を当てたね。やるじゃん。」
だよねーだよねー凄いよねー。
さっきの恥ずかしい場面なんて奈々氏も、もう忘れちゃおうと思ったね。
一週間後、
夏祭りの打ち上げから帰ってきた旦那が、
旦那 「今日さ、懐かしい物を目にしたよ。」
奈々氏「え何?」
旦那 「写真が趣味の人がいて、夏祭りの写真を撮ってくれていたんだけどね
何枚か残る中にお前の写真があった。」
奈々氏「は?」
旦那「あのお米を取りに行くところがバッチリ写っていたぜ。
来年の夏祭りの資料にも使うんだって。良かったな!」
ぬぁんでぇすとぉ。
奈々氏「なぜそこで『記念に貰って良いですか。』と持って帰らなかった。
あの時の心理描写については語っていたはずだ。なぜ…。」
旦那 「だって面白いし。」
旦那が念願のアイスソードでも手に入れないかな。
奪い取るのにな。
という訳で、今年の夏祭りは…参加するよ!
ビンゴは娘達に任せてね。
奈々氏「もう二度とビンゴなんてしないよ!」