泣き虫軍団 | フィリピンで働くシリアル・アントレプレナーの日記

泣き虫軍団

先日、現地 女性スタッフに泣かれて多いに動揺した が、
今日は別の2人から泣かれてしまった。


まず一人目。

朝、ご飯食べながらミーティング。
「精神面の強さ」って何だろうね、という雑談をしていたときに、
このスタッフはこう言った。

「私の姉は精神的にとても強い」
「姉が泣くのを今まで一切見たことがない」
「実際、先日彼女にとてもつらいことがあった」

彼女は小さいうちに両親を亡くしたが、姉が代わりに稼ぎ、彼女は姉に育ててもらってきた。
だから姉への思い入れは人一倍ある。
だから、

「それは姉にとって本当につらいことで・・・」

ここまで言いかけたところで、こらえきれなくなって、彼女は5分間くらい嗚咽した。

何があったのかは聞かなかったが、
その人がいないところで、その人のために思い出し泣きができるってのは、
すごく素敵なことだと思う。



つぎに二人目。

午後、パートタイムのスタッフとミーティング。
かなり古くから参加してもらっており、
すごく優秀で、責任感があって、
パートタイムながら、どんどん仕事を任せていった。

もうすぐ卒業を迎えており、
レアジョブのことは大好きなスタッフだし、
しっかりとしたポジション・給与を用意したし、
当然フルタイムになってくれるものと思っていたら、
今のままがいい、パートタイムのままがいいと言う。

何でだろうと思って、考えられうる理由を一つ一つ挙げて、
それらに対して用意できる対策を挙げていった。
だけど、ぜんぜん納得してくれない。

しかも、僕に対する返答の仕方がおかしい。
普段は真面目な人なのに、今日はやたらとヘラヘラしている。
体を左右にゆする。

だからこう聞いてみた。
「フルタイムをやりたくない本当の理由を、
 君は僕に言ってくれてないか、自分で気づいていないか、
 そのどちらかだと思うんだけれど、どっちなのかな?」

でもまだヘラヘラしている答えしか返ってこなかった。
だから、半分演技でちょっとキレてみた。
「OK、わかったよ。僕は今とてもSeriousだ。
 でも君はSeriousじゃない。
 僕は、君がレアジョブのことを非常に気にかけてくれると思っていたんだ、
 でもそれが間違いだったみたいで、今僕は非常に不愉快だ」

すると突然、彼女の目から滂沱と涙があふれてきた。
そして泣きながらこう言った。

「Kato-san、私はレアジョブのこと、本当に好きだし、
 本当に貢献したいと思っている。
 でも、今はフルタイムはやりたくない。」

フィリピン大生の中には、
自分で働いて学費を稼ぎながら、大学で勉強している人がめずらしくない。
いや、自分の学費を稼ぐだけじゃなくて、
田舎の両親に送金したり、兄弟姉妹を養っているも多い。

このパートタイムスタッフも、田舎に送金しているうちの一人。
今までずっと苦しい思いをしてきたと聞くが、
レアジョブに入り、講師をしながらパートタイムスタッフをやり、
ようやく金銭的に苦しい思いから脱却できたという。

「でもね、Kato-san、私、すごくつらいんだ」
「Kato-san、私にすごく期待するでしょう。だから、新しい仕事、どんどん振ってくるでしょう」
「今まで全部それとかはきちんとこなしてきたけれど、
 この土曜日はジョギングに行きたいとか、友達の所に行きたいとかそう思っても、
 仕事があるから、それができないときがあった」
「いっしょにパートタイムをやっているxxxには、Kato-san、新しい仕事を振らないでしょ。
 いつも私ばっかりに来る。
 だから、xxxは自分の担当分が終わればすぐ帰れるのに、私はそうじゃない。
 だからxxxがうらやましかった」
「私の性格上、任されたものをいい加減にやるってことが、できない。
 だから、フルタイムになって、Kato-sanにどんどん新しいことを任されたら、
 それを成し遂げることに集中してしまって、私、他のことができなくなる。」
「レアジョブのことは好きだけれど、レアジョブのために自分の人生を犠牲にするっていうChoiceを選ぶことができない。だから、パートタイムのままでいたい」
「私が家族を養わなきゃいけないのは知っているでしょ。レアジョブのおかげで、だいぶ楽になった。
 今のパートタイムのままでじゅうぶんい養えるのに、フルタイムになると、私の性格上、どうしても仕事にしばられてしまうの。 だからしばらくは人生を楽しみたいの。自由を謳歌させて。」

聞いているうちに泣きそうになって、なんか言わなくちゃと思って口を開こうとしたら僕まで泣いてしまった。
「君みたいな人が部下にいてくれて、僕は本当に幸せな男だと思う。」
泣きながらそう伝えた。



今回の彼女の状況は明らかに、サマンサタバサの社長が言っていた状況 で、今まで気づかなかったのは僕のミス。

能力が高い分、女性たちには次々と仕事のチャンスが広がっていくでしょう。そして--これも私の経験上の話なんですが--がむしゃらに期待に応えてようとしてくれるんです。それで体を壊す人がいます。・・・ 仕事ができる女性に対しては、できるだけ「仕事をするな」とアドバイスします。

だから、こう決めた。
・これから半年間、新しい仕事は彼女に振らない
・これから半年間、彼女の仕事時間も増やさない
・これから半年間、彼女についてほしかったポストは空欄のまま空けておく
・半年後、フルタイムかパートタイムか、再び意見を聞く



生い立ちが貧しい・苦しい、という状況は、
人生に大きな影響を与えるが、全てに影響を与えるわけではない。
努力しだいで、自分の人生を自分で決める余地は大きく残っている。

少なくともうちのスタッフたちは、人生をそうやって選んでいると思う。
そしてそうやって人生を自分で選んでいる人たちと働けることを、僕は幸せに思う。

泣き虫軍団ではあるけれど (僕を含め?)、 これからもがんばっていきたいと思う。