随分長いあいだ機械系のエンジニアとして生計を立ててきました。しかしながら、私が大学に入学したときは、既にメカトロの時代。産業用ロボットが自動車を作っていました。以降現在に至るまで、メカのみで動作する機械に携わったことは一度もありません。
 純メカと呼べるものを見たのは、蒸気機関車、オルゴール、祖父からもらったカメラぐらいでしょうか。これらのうち、現在でも生産されているのは、オルゴールくらいで、蒸気機関車は、記念に保存されている程度、カメラも80年代くらいから、電子シャッターになり、現在ではデジカメの時代に至っています。
 そうなると、今度は、純メカに触れてみたいと思うのは機械屋の性でしょう。
 そこで、祖父からもらった1960年代のフィルムカメラを出してきて、眺めていたのですが、フィルムの巻き上げレバーでチャージされた力が、その後のすべての動力となり、その機構を想像するだけでワクワクする。デジカメにはない興奮を覚えるわけです。
 それなら、もっとさかのぼってみようということで、レンジファインダーのNikonSシリーズを探してみました。
 
 イメージ 2左の写真が入手した1952年製造のNikonSです。
 このNikonSは、60年以上の歳月を経た今も、動作しています。
そこで、一度だけ使ってみようと、天気の良い日に撮影してみました。当日はフィルムが近所で手に入らず、電車に乗って買いに行く始末。デジカメの時代にフィルムを使う人はあまりいないとういことでしょう。
 
右の写真が、写した写真です。写ってました。ピントもあってます。イメージ 1今では、ピント合わせはカメラまかせですが、このカメラは、ヘリコイドを動かし、ファインダー内の二重像を一致させて、ピントを合わせます。古くなるとこの精度も落ちてくるのですが、まだまだ大丈夫でした。
 
このカメラは、おそらく、ほとんどの工程を手作業で組み立てたのでしょう。それにしても未だに動作するとは、当時の設計、生産技術にはただ驚くばかりです。
 もっとも、便宜性では、デジカメの足元にも及ばず、さらに重いことこの上なしです。
 科学技術の発展に資しながら、一方で、電池の一切いらない、純メカに憧れるのもまた楽しいものです。(masa)