初めまして。当ブログに初めて投稿する関東支部のhideと申します。よろしくお願いいたします。
 さて、ブログに投稿してくれと言われたものの、何を書いたらよいのか正直悩んでしまいました。登場する皆さんの書く文章は、非常に高度な内容のものばかりで、私が入るすきなどあるのだろうかと腰が引けている状態です。でも、そうとも言っていられないので、とりあえず、最近まで私が携わっていた業務について書いていきたいと思います。
 
 最近まで私は、鉄道のRAMS規格というものに携わっていました。RAMSとは、Reliability(信頼性)、Availability(可用性)、Maintainability(保全性)、Safety(安全性)の略で、その頭文字をとってRAMS規格と呼んでいます。この企画を一言で言うと、安全性とアベイラビリティ(システムが壊れにくく、万が一壊れても容易に修理することができることに関する指標)を両立させるための規格です。
 
 一般的に壊れにくいシステムを構築すれば、安全性の高いものが実現できると思いがちですが、実はそんなに単純ではありません。システムの安全性を高めるためには、危険側故障を防止することが必須となります。そのためには、システムが危険な状態に陥らないように、安全に停止させることが必要です。福島第一原子力発電所で不幸な放射能漏れ事故が発生しましたが、これは原子炉に電気を供給することができなくなったことにより、原子炉の冷却ができなくなり、結果としてメルトダウンに至ったことが原因です。つまり、フェイルセーフの考え方が不十分だったということになります。
 
 しかし、フェイルセーフの考え方を踏襲して、システムを安全に停止できるように設計することは、アベイラビリティを低下させることにつながります。私が携わっている鉄道信号の世界では、列車遅延につながるアベイラビリティの低下は、タブーとされています。(もっとも、程度の問題はありますが・・。)従って、信号機器メーカーはそのトレードオフ問題を解決しなければなりません。そのために考えられたのがRAMS規格です。
 
 今まで私たちの業界では、過去に発生した不具合事象や事故の要因を調査し、それを再発させないようにすることで安全性を確保してきました。いわゆる過去に発生した事象の経験則により、安全性を確保する考え方で、長い間、国内の製品作りはそれが主流となっていました。しかし、近年、国内の需要が飽和状態になり、製品を海外に輸出して利益を確保する必要に迫られるようになりました。国内の顧客であれば、私たちのブランドを信用し製品を購入してくださるのですが、海外ではそうはいきません。私達の製品を初めて見るお客様に、製品の安全性とアベイラビリティが、必要十分なレベルを満たしていることを証明しなければならなくなったのです。海外の案件では、あらかじめ安全性とアベイラビリティの目標値が定められ、設計時にその目標を達成していることを証明しなければなりません。そのためには、従来の再発防止の考え方を重視する方法から未然防止の考え方を重視する方法にシフトし、製品の安全性を設計時に確保する考え方の発想を変えなければならなくなったのです。
 
 では、どのようにして安全性とアベイラビリティを両立していることを証明するのかと言うと・・・・。これから先は、企業秘密が含まれるため、内容を割愛させていただくことにします。(もし、希望される方は、全国大会等の機会にリクエストを出してください。)
 
 本来ならば、製品設計時にこのような考え方を踏襲することは、当たり前のことです。しかし、大規模システムにおいては、その作業が膨大なものになり、QCDを考えると現実的でないこともあります。しかし、今後は、このような考え方が主流になっていくものと思われます。私は、規格に携わったたメンバーとしてこの考え方を一過性のものにせず、業界に定着させていくことが必要と考えています。そしてこの考え方を自らのものとして消化したとき、さらなる高いステージに立つことができるのかなと思います。そんなことを夢見ながら、今後も規格と奮闘していきたいと思います。