2012年も1年があっという間に過ぎ、大晦日になってしまいました。私は今、上海に滞在しているので、正月休みは1月1日から3日の3日間で、街も正月らしさは全く感じません。でも、この連休を利用しての観光旅行でしょうか? 今、会社のオフィスでこのプログを書いていますが、目の前に見える上海のシンボルでもあるテレビ塔(東方明珠)は、いつもより入場者の列が長い感じです。
12月19日に技術士一次試験の合格発表がありました。合格された皆様方おめでとうございます。次はいよいよ二次試験ですね。合格された方は是非この勢いで来年の二次試験を目指してください。一次試験の平均合格年齢は37歳くらいが続いていますが、ライフワークからも40歳前後で技術士をとれれば、今後の技術者としての仕事はさらに磨きがかったものになると思います。来年からは試験制度が変更されるそうですが、技術士の求められている四つの能力「課題解決能力」、「応用能力」、「専門知識」、「論理的思考力」は変わっていませんから、試験制度がいくら変わろうと、日頃の業務を通じてこれらの能力を高めていくことを意識していれば、恐れるに足らずだと思います。
二次試験は今、口頭試験の真最中ですね。まだ終わってない方は緊張して年末年始を過ごされているのではないかと思います。私は、昨年まさに街にクリスマスソングが鳴り響くイブの日に渋谷で試験を受けました。華やいだ街と緊張感に包まれた試験会場のギャップが強く印象に残っています。
口頭試験の“とう”の字は、“答”ではなく“頭”です。私は試験の2、3週間前にこのことを聞いて、目から鱗が落ちました。口答試験では、口で答える試験だけになってしまいますが、口頭試験は自分の頭の中にある考えや主張を、自分の口で説明、表現することです。私の場合の口頭試問の大きなテーマは、「顧客や技術にいかに付加価値を与えることができるか?」でした。もう少し技術的な質問を想定していて、このような大上段からの質問を想定していませんでしたので、最初は戸惑いました。しかし、面接官の先生方との対話を通じて、先生のお考えもお聞きすることができ、あっという間の時間でした。無料でその道一流の先生からご教示頂き、何故か得したような気分で、合否とは関係なく面白かったな~という満足な気持ちで試験場を出てきました。
先日テレビで、インタビュアーで作家・エッセイストでもいらっしゃる阿川佐和子さんのトークを見ました。今年はご自身の書かれた「聞く力」という本が、年間ベストセラー1位になったそうです。顧客や技術に付加価値を与えるためには、双方のコミュニケーションを通じて相手の真の要求を掴むことが大切ですが、コミュニケーションにおいては、実は話すことより、聞くことの方が遥かに大切で難しいのではと思っています。言い換えれば、良く聞いて相手の真のニーズを掴み取る能力、これが聞く力だと思います。もちろん、口頭試験の場合には、黙って聞いているだけでは不合格になってしまいますが、面接官の先生方の言葉をよく聞いて、自分の頭の中で咀嚼することも必要ではないでしょうか?ひょっとすると、先生方の言葉の中に色々ヒントがあるかも知れませんよ。技術士には、他の人の言うことを十分に理解して、その中で最適解を見つけて、自分の言葉で表現する能力が求められており、それを口頭試験でも求めているようにも感じます。これから口頭試験を受けられる方は、“聞く力”も意識してみては如何でしょうか。
 
話は変わりますが、2012年度の中国のGDP成長率は、13年ぶりに8%割れが確実です。日本で考えると7%台の経済成長率もあればすごいと思いますが、中国経済の停滞が世界経済へ悪影響を与えて、世界経済の震源地になるようなこともいわれています。しかしこちらで生活していると、中国国内の需要つまり内需はまだまだいくらでもあるように思われます。チャイナープラスワンといって、リスク分散の観点から中国国内の生産工場を他ASEAN国に移す企業も出てきているようですが、GDPの規模から見れば、タイとマレーシア、ベトナム、ミャンマー4カ国のGDP足して、やっと広東省1省の規模であり、中国の保護貿易政策などのリスクを考えると、中国での生産を縮小するということは、この広い中国市場を諦めるということにつながっていくのではないかと思います。やはりまだ、日本企業の中国での生産活動は増えていくのではないでしょうか?
尖閣諸島問題で、今年秋口から日中関係はキクシャクしており、中国では日本製品不買運動も起きています。前回はブランドについて話をしましたが、これからは日本ブランドであることをアピールしなくても勝負できる製品、サービスを開発して、中国の人々に役に立っている企業であることを認知してもらわないと、中国市場では生き残っていけないのではと思います。現地に根付いた製品、サービスを開発するためには、相手を知ることが必要であり、まさに“聞く力”を求められているのではではないでしょうか?
 
それでは、皆様良い年をお過ごし下さい。来年も宜しくお願いします。