「ね、なんかあっち、バタバタしてるわね・・ 何かあったのかな・・?」

 

 

松永のとこ、さっきから皆、バタバタしてる

中でも松永がずっと立ったまま、色々指示してるみたいに見えるけど

シャツ姿に、スーツの上着を手にかけ、バッグ持ってる?

 

 

「夏川さん、なんか、聞いたんですけど、松永さん、S支社に応援に行くんだとか」

 

「S支社に?」

 

応援に行くって・・・

ほんとに何かあったんだ!?

 

あっ、松永、出て行くー

 

 

 

私は走りだしていた

廊下に

 

こっちから出て、松永に追いついてー

 

 

「松永っー」

 

 

「・・・ 夏川」

 

ひとりかと思ったら、松永の向こうに武田さんもいた

見えてなかった

 

「松永さん、私、先に行きますね?」

 

「あ?あぁ、そうだな。じゃ、あとで」

 

「はい」

 

武田さんが駆けて行った

 

 

あとで・・?

 

 

「なんか、S支社に応援に行くんだって?」

 

「早いな。もう聞いたのか?あぁ、ちょっと行ってくる」

 

「松永が行くってことは、何かトラブってる?」

 

「悪い。詳しく話してる暇ないんだわ。急がないとー」

 

「あ、ごめんっ・・えと・・ 松永ひとり?」

 

「いや。武田と一緒だけど?」

 

やっぱり?

さっきの会話からもしかして、って思ったけど一緒!?

ふたりで行くってこと?

 

「なんだ?もしかして、妬いてくれてんのか?」

 

「いや、そんなことないけど」

 

「ないのかよ。・・ハハ、ま、とにかく急いでるから行くわ。お前も頑張れよ、じゃあな」

 

「ありがと。松永も頑張ってー」

 

 

呼び止めてごめん

ほんとに急いでるんだね

松永、走って行っちゃった

 

 

武田さんってさ

最近はいつも松永と一緒にいるよね

松永からも、よく話題に出る、『出来る後輩』

 

さっきも、私が松永に話しかけると

気を遣って、去り際に私にも会釈して行ってくれた

すっごい好感度 高いのよね

美人だし

 

妬くっていうかさ

 

松永・・・

 

気づいてないのかなぁ~

 

とは思ってるよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電話する、って何時なのよ

 

 

引っ越しの準備を進めては

休憩をする

 

スマホは自分の近くに置いてたけど

気になりすぎるから、放っておこう

こんなんじゃ、進まないわ

 

ユヅルくんのDVDは封印をして

(見始めたら止まらないことはわかってる)

 

・・・ん?

 

そう言えば、いざ電話が来たら

何て言うの?

あれって、ユヅルくんの話よね?

 

ユヅルくんの作品を見て、感想を教えて

ってことでDVD預かって帰った

 

ということでいい?

 

っていうか、それが事実

 

だけど、なんで?って聞かれたらどうする?

そこ、誰でも不思議に思うところよね

 

 

私は、部屋の一画を占める本棚いっぱいに敷き詰められた少女漫画たちを見ながら

 

大きく溜息をついた

 

 

「これも段ボールにつめないとね・・・」

 

 

 

ピコンッ

 

 

スマホが鳴った

 

ガバッー

慌てて手にとる

 

 

ーー 準備、捗ってます?

 

 

読んだ途端、電話が鳴り始めた

 

 

はやっ・・

 

「もしもし」

 

「夏川さんの部屋って、何号室です?」

 

「え?何号室って・・ 302だけど」

 

「302、302、・・・と」

 

「え?なに?」

 

 

まさか・・?

こういう展開って

漫画なんかだと、家まで来てたり?

 

いやいや、まさかね?

そんなことないよね

 

確かに前、送ってもらったけど

家に来る意味がわかんないもんね

 

そういう間柄でもないし?

 

 

「ね、森島くん、ユヅルくんの話なんだけどー」

 

ピンッポーーーン

 

 

 

・・・え?

 

うそでしょ?

ほんとに?

 

玄関に走り

モニターで来訪者を確認すると

ラフな私服姿の森島くんが

 

スマホを手に

 

「夏川さん、誰か来たんじゃないです?」

 

 

すごい

声は耳から聞こえるのに

喋ってる姿も見えてる

面白すぎるっ!!

 

 

「え~?でも、誰も来る予定ないから、このまま居留守、使おうかな。変な人だと怖いしね」

 

 

ふふっ

 

 

「・・・ あー、確かに。その危機管理能力、いいと思います」

 

 

そう言うと森島くん、スマホで話しながら

くるっと向きを変え、歩いて消えていった

 

カメラからー

 

 

「えっ?帰っちゃうのっ?」

 

「え?」

 

 

思わず、聞いちゃった

 

 

私はスマホを手に、玄関のドアを開ける

 

 

結構歩いていってた森島くん

振り返ると

 

 

「・・・・ 居留守、使うんじゃなかったんです?」

 

 

またこっちへと引き返してくる

 

 

あれ?

 

なんか、嬉しい・・?

喜んでる?

私・・・

 

 

ん?

なんで?

 

いや、ちょっと待って?

 

これ、部屋に上げることになるんじゃ?

無理無理無理無理っ

 

 

バタンッー

 

 

ドアを閉めると、背にしてその前に立った

 

必然的に、森島くんと向かい合うことになる

 

 

「どうしたの?こんな時間に」

 

「・・・・ ですよね」

 

 

・・・ん?

 

「何それ、返事になってないと思うんだけど」

 

「上げてくれないんですか?部屋」

 

「無理です。」

 

「なんで?」

 

「あーっとほら、今、引っ越し準備ですっごいことになってるし」

 

「わかってる。だから手伝いに来た。オレ、実は引っ越し屋さんでもバイトしてたことあるんですよ。段ボール詰めるの、得意ですよ」

 

「そうなのっ?・・・ じゃなくてっ!段ボールに詰めてくの、手伝ってもらうなんて恥ずかしすぎるわよ、だいたい、何で森島くん、こんなとこ来てるの?引っ越しの手伝いって、当日かと思ってた。まぁ、それも業者さんにお願いしてるから必要ないっちゃ、ないんだけど。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

「森島くん・・?」

 

 

黙られても困る

 

 

「・・・ ですよね、やっぱ帰ります」

 

 

「え?」

 

 

森島くん、またまた踵を返して、エレベーターのある方へと歩いて行く

 

 

「ちょっ、ちょっと待ってよ、森島くんっー 」

 

 

て叫んだところに、同じフロアの住人がエレベーターから降りて歩いてきた

 

すれ違いざまジロジロ見られる

 

 

私は森島君の腕を掴むと

 

「・・・ 鍵、あけっぱだから」ぼそっ

 

そのまま連れ戻すようになっちゃって

 

何よ、これ、もうっ

まるで私がこのイケメンを連れ込むみたいじゃないのっ!!

 

 

「ほんとに今、すっごい状態だからねっ!?」

 

 

ガチャ

 

 

 

 

 

 

バタンッー