「元気ですか?」


あなたの手紙はだいたいこう始まる。
しばらく会えてない恋人からの手紙。

いまどきメールでもいいじゃないかとか、電話してるんでしょ?とか言われる。
だけど、この心のこもった字は誰にも真似できない。
電子なんかではあらわせない物なのだ。


全て読み終え、窓の外を見上げると薄い雲が月を透かしている。
その月を写真に閉じ込めた。

「げんきですか?」
ペンの音だけが響いている。
今でも、虹を見ると思い出す。


その日、空には虹が掛かっていた。
とてもキレイな虹だった。
七色のアーチは全てを吸い込み、また吐き出す。
僕の心も吸い込まれた。


虹の中には美しい女性が立っていた。
言葉には出来ない衝撃を僕に与えた。

言葉など要らなかった。
2人でどれだけの時を過ごしただろう。

僕は知っていた。
虹はいつか消えることを。


だから、そのひとには言わなかった。
別れのときが来ることを。


気づけば僕は座り込んでいた。
不思議な体験をしたはずなのに。
それでいいような気がした。
誰かに聞いて欲しいとも思わなかったし、聞かれても答える気は無かった。


今でも虹を見ると思い出すんだ。
あの女性を。
あのひとを。
目。

そう、目。

いつからかボクの部屋の一部に目が出来ていた。
なぜか初めてみたときは、違和感を感じなかった。
「あ、目だ」と言った具合だった。

しかし、いささか落ち着かないものである。
人・・・ではないかもしれないが、見られながら生活するのは落ち着かない。


ある日、友達がウチに来ることになった。
仕方が無いのでポスターを上からかぶせた。

何事も無く、友達は帰った。
しかし、目を気にしないで生活するのはなんと自由であろう。
ボクはしばらくそのまま過ごした。


しばらくしたある日、ふと気になってポスターを剥がそうとした。
しかし、目のあった部分だけ剥がれない。どうしても剥がれなかった。

剥がれない。
気になる。
剥がれない。

ボクはドライバーを持ち出した。
嫌な予感がした。だけど、気持ちを抑え切れなかった。


ブスッ。

鈍い音がした。
すると、不思議なことにポスターははがれ、壁にはドライバーの跡だけ残った。

この穴をどうしようかなどと考えながら1時間ぐらい過ごした。
そのとき、携帯が鳴った。
発信元は父親の携帯電話。


「もしもし?」

「おい!大変だ!母さんが大変なんだ!」

「どうしたの?落ち着いて。」



「・・・家で転んで、目にドライバーが刺さったんだ。」



「出して!!ここから出して!!!」

真っ暗な部屋に閉じ込められた。
何があるかも確認できない。

目が覚めたらここに居た。
寄りかかっていた壁に向かって叫んでいた。

そのうち突然部屋がゆれだした。

ガタガタガタガタ・・・・・


私は目を覚ました。

今度は真っ白な部屋。
眩しい。

見覚えの無い部屋を見回して、私は絶望した。
何も無い。

四方を壁に囲まれた部屋。
きっとさっきの部屋もこんな部屋だったんだと思う。

「あ、また・・・」


ガタガタガタガタ・・・・・


私は目を覚ました。
見覚えのある部屋。

だけど、違った。

「・・・扉が・・・無い・・・」

携帯が鳴る。

パカッ


「きゃっ!!!」



そこにはずっと下まで、こう書かれていた

この世界は、夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢の・・・・・
暗いくらい洞窟
少し暖かくて、湿っている。

狭いせまい洞窟
出口まではまだまだありそう。

眩しい眩しい出口
少しずつ大きくなってきた。

明るい広い世界
よく分らないけど、涙が出てくる。


笑い声と、泣き声と、電子音が響く部屋。
みんなが手を振ってくる。

嬉しそうに。