登場する人物・団体など名称は全て架空の物です
特定の地名なども一切関係ありません。
第1話
私は聖子、入社して３年目の序列順位最下位の平社員
週末家族で晩御飯を食べていたら玄関のチャイムが鳴った
インターホンが一番近い私がモニターを覗くとあのオヤジだ
廃棄物処理会社の社長が訪ねて来た
父にその事を伝え出てもらうと社長は私にも用事があると
一緒に話を聞いて欲しいと手土産まで持参して来た
社長は町内会役員も務めているから色々と大変らしい
結論から言うと今年度の地区の盆踊り大会の司会進行役の
アドバイスを頼みに来た
本来は同地区の中学校の女子放送部員が務める予定が
夏風邪を患って声が出せなくなり代役を立てたけど
なかなか上手く出来ないとのことだ
社長は私が中学時代に盆踊りの司会進行役を
務めていたことを知っていた
中学時代に司会進行を務めた聖子
そして、この時期になると「そう言えば、過去に盆踊りを盛り上げた
元気な女子中学生がいたな～」と世間話もたまに出る
社長は私の大好きな『良い所のプリン』を手土産で盆踊りのやぐら組立に
続いてまたも釣ろうとした
Abemaプリン(非売品)
そして、私は単純だからそのプリンでまた釣られた、チョロイ女だぜ
盆踊りの練習日程を渡され、後日練習場の農業センターへ出掛けた
社長のオヤジには悪いと思いながらワザと遅れるフリをした
スマホに着信が来たけど無視した、練習風景を陰で見るためだ
２回目の着信が来た時はLINEで『ゴメン、少し遅れる』を送った
私は農業センターの窓の外から司会進行の練習風景を見学し
女子中学生の上手く出来ない理由が何となく分かった
もう少し様子を見たけどやっぱり原因はアレだと確信した
練習場に入って社長の所へ行き一応遅れた事になっているため
社長のメンツだけでも立てるため頭だけは下げてやった
『良い所のプリン』を食べたから礼儀だけは果たしたぜ
私を司会進行役の所へ連れて行き紹介が始まる前に
「あなた司会進行役の生徒と同級生？」
近くに居た女子中学生に尋ねるとハイと答えたため
「オバサン、悪いけどこの女子生徒と交代してよ」
隣に居たオバサンは盆踊りの曲目を間違えない様に
指示するのは良いけどプレッシャーの掛け過ぎだった
オバサンは案の定アレコレと言って来た、これも想定内
「オバサン、ここで座ってても下っ腹は引っ込まないよ
同世代の踊り手の人達に今まで通りこの女子中学生に
プレッシャー掛けて来たようにすれば踊り手も上手くなるよ」
社長が慌てて割って入って来たけど、これも想定内
同級生同士で励まし合いながらやれば上手く出来ると説明した
練習が再開される時に私が手本をタダで見せる事にした
盆踊りの曲目の指示は当然控えの女子生徒に頼んでみた
そして、盆踊りの台本を借りて司会進行席に座って
アドリブもテンコ盛りに入れてほんの少しだけ早口でやって見せた
曲目の指示役の女子生徒には目と指で合図を送って
曲が流れている間は耳元で「今の調子で良いよ」と褒めた
すると控えの女子中学生はニコッと笑顔で返してくれた。
つづく