第3話

 

 見学だけで良いと言われ邪魔にならない様に

それだけを注意して見学していると

『そのうどんが入った箱を麺コーナーへ運んで』

 私は麺コーナー配置が決まりうどんを担当した

○○フェアーになるとラーメン側も長蛇の列で大忙し

企業側が半額補助するため割高でも人気度が凄い

数ヶ月も経ち有る事に気付いた、○○フェアーでも

素うどんしか頼まない常連さんだ、その人は

最初に工場に来た時に食堂まで案内してくれた人

常連さんは決まって金曜日は味噌ラーメンのパターン

そして、麺コーナーの先輩パートさんと出来上がりを

待つ間に時々見掛ける冗談話をしているけど

私はその中に入った事が無い、入れない、恥ずかしい。

 ある日、いつもの様に出勤して工場内を歩いていると

『おはようございます』と素うどんの常連さんが

季節に沿った挨拶やテレビの重大ニュースに沿った

挨拶をしてくれたのでお返しの挨拶をする時もある

食堂の仕事も終わり先輩パートさん達と工場内を

歩いていると『お疲れ~』と労いの挨拶もしてくれる

先輩パートさんと談笑してる所を見掛けるけど

何故か私には出来ない。

 また、○○フェアーの日がやって来た長蛇の列だ

順番にメニューを聞きながら器をセットしたり

冷凍うどんを菜箸で湯がいて次の人のメニューを

聞いたりして待たせない様に努力をしてみせる

素うどんの常連さんも並んでいた

何気なしにと言うか無意識で素うどんメニューの方を

指で差してみると頷いてくれ意思疎通が出来た感じ

出来上がった素うどんを常連さんに差し出す際に

マスクの中で口角が上がった自分が居た。

 その日の晩御飯時に父が私をからかった

『なあ、さっきから一人でニヤニヤして何か良い事でも?』

その時私は昼間の事を無意識で思い出していた。

 

          つづく