第49話
 
 最後のトリを日本で道場館長を務める甘川老人が登場した
セレモニーの計画通りに受け手も畳の上に立つと甘川老人から
「これから計画を変えたいので、ほれ、あそこに座っている
白帯の西側国の女性と変わってくれないか」
そこに座っていたのは道着に白帯を締めたステラだった
ステラはおじいちゃん先生から指名されたので出る姿勢を見せた
しかし司会進行役の甘川老人の長男は「待った」を掛けた
甘川老人は長男に
「西側国でこれから合気道をするんじゃ、日本人同士で演武を
披露しても、こちらの国民には到底理解し難いじゃろうに
だから、ほれ西側国の白帯の女性が適任じゃよ」
見学者の西側国の人でも柔道・空手などは昇級レベルに応じて
帯の色が変わる程度は理解していたが
まさかの白帯が指名された事にザワザワした
更に甘川老人は長男に追い打ちを掛けた
「おい、司会者、さっき合気道とは老若男女を問わず
誰でも稽古を積めばと説明したのでは?ウソはダメだぞ」
甘川老人の長男は痛い所を突かれ甘川老人に従った
ステラはおじいちゃん先生から手招きされて畳の上に立った
先程の指導員と有段者による演武とはまた違った魅力が有った
指導員の迫力のある体捌きに対して甘川老人は
柳の枝が揺れる様な体捌きでステラを投げたりして
その演武は休む事無く10分ほど続いていた
そして、最後の技で制止姿勢を決められると畳にうつ伏せになった
ステラは畳にタップをしてトリであった演武が終了した
ステラとおじいちゃん先生は畳の上で正座をして頭を下げて一礼した
「アリガトウ、ゴザイマシタ」
ステラは日本語で挨拶をして畳から下がって行った
セレモニーの最後は見学者に対して質疑応答だった
笑いが起こる質疑応答の中には
「それは無理だぞ、アンタは機関銃相手に勝てるのか?
ワシなら直ぐに降参じゃよ、10メートル離れてたら
相手を掴まえる前に撃たれて即○だぞ」
甘川老人は見学者と対話式で行っている最中に
ある人物に目が止まった
「そこの中年の男性はチョット出て来なさい」
 
                            つづく