第29話
 
世話役ザイラが銃口を頭に向けられた様子を見たサラは
「兵隊さん、本当にお願い乱暴は止めて、ザイラが居たから
今まで辛抱が出来たの、食事も私の好き嫌いをちゃんと聞いてくれて
私を叩いたり嫌な事をしたりそんな事は一度も無かったの
だから、ザイラに乱暴は止めて」
軍曹はザイラの事を悲しい様子で訴えるサラを見て
アーマーベストから頑丈な結束バンドを数本とガムテープを取り出して
ザイラの口を塞ぎ手足を縛り歩行が困難になる様に
縛られた手足同士を更に縛り付けた
軍曹は拘束の処置が済むと
「我々はこれからサラと脱出するが本来なら命が無いと思え
しかし、お前は生かしておくサラに感謝しろ」
軍曹はこれは仕方の無い方法で自分たちの目的は
サラを大統領パパとママの所に無事に返す任務で来たと話した
一方で別荘への侵入が明らかになりテロリスト達と銃撃戦が始まった
世話役ザイラが携帯していた無線機から呼び出しが入った
「早く子供を連れて来い」
その呼び出しに返事が無いため再度テロリストから呼び出しが入った
異変に気付いたテロリスト達はサラが監禁されている部屋に向かった
軍曹の相方からテロリストがこちらに向かっていると連絡され
軍曹はスナイパーに脱出ルートの方角を無線で尋ねた
「fuseは無事に作動している、これから持って帰る安全な帰り道の
ナビを頼む」
※ 「fuse」とは救出作戦に於いてサラの事を暗号にした呼び名
スナイパーはテロリストのアジトである別荘内で銃撃戦が始まったため
救出メンバーに渡したビーコンが認証装置のモニターに表示するよう
アプリを起動させて救出メンバーの位置確認と退避ルートを
伝えようとした所にテロリストは中東東国独自で製造した
超小型のロケットランチャーを発射させて別荘の壁をぶち抜く攻撃を
始めたため廊下の突き当りの壁に大きな穴が開いた
軍曹は想定外の武器を所持していた事に危機感を抱いた
スナイパーも赤外線サーモ視認証装置に想像を超える反応を
示したため「うっわー、なんかヤバイ」と声が漏れてしまった
他の救出メンバーも壁をぶち抜く爆撃音に軍曹達がヤバイと感じて
スナイパーから超小型ロケットランチャーを持つテロリストの
位置を聞き出して総攻撃を仕掛けた
軍曹は何も盾になる物が無い廊下の角で応戦するよりもと考え
目の前にあった部屋にサラを連れて爆撃からの回避行動をした
テロリストは再度超小型ロケットランチャーを発射させた
軍曹はその発射音に反応してサラの耳を塞いで覆い被さった
「怖くても我慢だ」
 
                            つづく