第250話 |
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大谷はいづみの手を両手で力強く握りながら今の状況下を |
視覚障害者でありながら自分の心配より他人を心配する気質を |
ヤブ医者が指名した理由に納得し |
「ケンカで負けた事は忘れてもね、ケツ丸出しは死んでも・・・・忘れない」 |
いづみの手を握っていた手を肩にポンポンと当てて立ち上がり |
歩行誘導をしながら避難所に設置した仮の休憩場まで戻った |
年配医師は非常防災バッグから非常食を取り出して |
「避難所でこれを食べないで済む状況にならないとダメだな」 |
大谷は非常食の好みをいづみに尋ねると、いづみは少し間を開けて |
「特に無いです、食べられるだけで良いです」 |
いづみが少し間を開けた理由には色々とあり |
視覚障害者には不都合の場合もあるとは言えなかった |
年配医師は、最近は非常食も豊富になり選び放題と補足した |
大谷は近年便利になり過ぎだから物事が利用不可能になると大慌てと |
年配医師もそれは一理あると言い、便利になった分、一部が停止すると |
堅い乾パンを食べる羽目になると、自分達の置かれた境遇を笑って話した |
そこへ避難所の責任者が尋ねてきた |
「先生、相談なんだけど事務所までお越し下さい」 |
避難所の責任者は,年配医師を災害派遣員としての知識を借りたかった |
避難所の事務所では避難所開設日から今日までの経緯を話すと |
年配医師は大谷を事務所に呼びもう一度説明させた |
責任者は自分の役割を怠った事で燃料ガスが空のため |
翌日からのカップ麺やお湯の提供が出来なくなったと自分を反省した |
自衛隊経験者で大谷は全てをまとめて出した答えが |
・集落の防災無線は停電にて使用不可能 |
・乗用車のラジオからはある程度の情報収集可能 |
・テレビ機能付きのカーナビは山間部のため受信状況が悪く映らない |
・無理して山の斜面を歩くと二次災害の恐れがある |
・唯一の救いは避難所に手押しポンプで水が確保出来ている事 |
「床下浸水程度のお宅から調理器具を借用すれば凌ぐことは可能 |
しかし、一部を除き浸水と濁水で地形不明です |
それと、避難所に到着した時に気付いたのが高圧送電が近い事で |
自衛隊のヘリが来ても接近が不可能と思います、万事休すです」 |
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つづく |