第50話「老人達の心配事」 |
|
富三が就職した大阪の料亭が有る商店街では |
毎年恒例の夏祭りが催しされ運営係の役割を |
代役で任された富三は不慣れではあったが |
同じ商店街で働く同世代の人達に助けられ |
無難なく事が進んでいた |
その頃、富三の故郷では隣町に土地開発で |
公共事業が参入し新しく道路が出来たり |
田畑を整備して住宅が建てられていた |
いづみが通う養護施設も解体が終わり |
耐震設計を満たした新たな施設の工事が始まっていた |
養護施設の工事期間中は宿舎が県営住宅で |
過ごす事になっていたが、先天性盲目のいづみは |
生活に慣れるまで苦労の連続であった |
土地開発が進められている近隣の地元住民の間で |
妙な噂が囁かれている事は事実であった |
その噂話とは、新しく道路を造るために削り過ぎている |
山の斜面や落石の災害が起きないか心配する噂だった |
それはお年寄り達から言い伝えられて来た土砂崩れの事である |
昔から大雨が続くと山が崩れ山に近い田畑が何度も埋まって |
その度に農作物をダメにしていたと言う昔話であった |
しかし、そんな昔話も山に砂防堤を設置したりして来たので |
土砂崩れの災害が随分減ったのでいつしか忘れられていた |
まさにそれであった『災いは忘れた頃にやって来る』 |
梅雨時の長雨時はなんの影響も出なかったが |
本年は例年より台風の発生回数も多く |
関東への接近回数も多めな年を迎えていた |
山の方で新たな道路工事をしている現場では |
小さな落石や土砂の流出で工事が止まる事態もしばし起きていた。 |
|
つづく |