第40話「大阪に行く富三」
 
日本列島に桜前線のニュースがテレビより流れ
富三が通う中学では卒業式が行われていた
その日の夜は家族全員で富三に激励を送った
富三は以前から大阪の料理亭で働きながら
高校へ通学する事が決まっていたのである
もう一方では養護施設で働いていた
臨時職員のみどりが4月より東京の小学校で
担任を受け持つ教師として行く事が決定し
ささやかなお別れ会が行われていた
3月末の深夜に富三と父親は夜行バスで
大阪を目指していた
車中では富三の事が心配で父親は
なかなか寝付けずにウトウトするだけだった
そしてバスは大阪のバスターミナルに到着した
バスから降りた富三は両手を挙げてあくびをし
「父ちゃん、東京と同じで都会だな」
父親は見知らぬ地で新たな生活が
待ち受けている事に動じない息子に
内心ホッとした様子だった
父親は料亭に到着の電話を入れると
お店のクルマが待機していると言われた
そのクルマはすぐに発見する事が出来た
お店の名前が入っている大型マイクロバスだった
板前姿の運転手に案内され一路お店に向かう
2人であった
そして、お店に到着すると富三の父は
観光バスが何台も駐車出来る大型駐車場や
店舗ビルを思わせる大きな建造物のお店に
大変驚いた
しかしそこは数店舗もあるひとつのお店にすぎなかった
するとお店からひとりの見慣れた男性が出て来た
「ようこそ、お待ちしてました、長時間の移動で
疲れてませんか?」
大将と女将が出迎えてくれたのであった
女将は富三を見るのが初めてで
一目見るとビックリした様子だった
一方の富三は久し振りの都会の風景に
興奮した様子だった
「おはようございます富三です、これからお世話になります
よろしくお願いします」
頭を深々と下げて挨拶をするのであった
朝食の用意がしてあると店内に案内し
食事をしながら今日の予定を話し始めた
しばらくは親子離ればなれの生活を
送る事になるからと
実の兄が経営する隣のホテルで休憩し
すぐ近くにアメリカ映画をベースとした
テーマパークがあるから夜まで親子2人で
楽しんで欲しいと説明した
ホテルで休憩を済ませた富三親子は
テーマパーク館内を堪能するのであった。
 
                            つづく