第1話「7年後の朝」

 

朝から「チュンチュンチュン」スズメが鳴いている

昨日と何も変わらない普通の出来事
東京の下町では大衆食堂を営む店主の富三が
朝早くから仕込みの準備中
これもまた普通の出来事である
そして女将の加奈は店先と店内の掃除や
朝ごはんの支度などを淡々とこなしていた
子供部屋では中学2年生の兄(隆一)と
小学2年生の妹(裕美)がまだ寝ている
兄は中学の部活で野球部に所属していて
未だ公式戦に出場経験の無い補欠選手
妹の裕美は早産で生まれたため体が小さい
朝6時に目覚まし時計が鳴り始めた
妹は目を擦りながら起き上る
この兄妹には毎朝の日課があり
町内を一周するランニングがそれである
店先を清掃している母の手に持つ
チリトリをホウキで叩く音が子供たちを送り出す
スタートの合図である
「車に気を付けるんだよ」と母の声
そこへ隣に住む中規模の建築業を営む
社長さんが軽く体を解しながら営業事務所から出て来た
「あっ、女将さんおはよう」と挨拶を交わす2人
その頃、店内で仕込み中の富三は
昨夜は寝付けなかったのかアクビをしていた
そこに女将の加奈が店内に戻ってきた
「あんた昨夜は寝付けなかったんだね」と女将が言った
「あ~、あれから7年かぁ~」と富三が言う
 
                          つづく

創作文「恵子」イメージキャラ

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