カチ、カチ、

この音を何万回聴いただろうか
ベランダに灰皿を用意し
今日の鬱憤を燃やすかの如く
煌々ときらめく炎を煙草の先端に近づける

吸い始めたのは一年前
全てを燃やして解決したかった
3年間で
嫁を亡くし
親も亡くし
頼るべき人が世界のどこにもいなくなったかの
如く感じ始めたあの瞬間
近くのコンビニに駆け寄りふと煙草を買った
理由はわからないけど
本当に何もかも燃やしたかったんだと思う
死にたくはなかったけど
消えたいと思い続けた
今も時々思う

僕の心の炎を現実世界の炎で
増幅できるならどんなに楽なことなのだろうか
そんな思いで一本吸ってみた
父親が喫煙者だった僕は煙に対する抗体は持っていたのだろう
あまり煙に対する戸惑いはなかった

煙草の煙が目に染みやがる

どこかの漫画で聞いたそのセリフが真っ先に出てくるくらい煙草の煙が目に染みていた

煙草を吸う理由は人それぞれだろう
誰かに勧められた
先輩とか
上司とか
親とか

全て断り続けていた
でも今、僕は煙草を吸っている
1日多くても1本しか吸わない
何故吸う本数が増えないのか
自分でも謎だ
間違いなく依存しているはずなのに
吸う本数は増えない

多分煙草に依存しているんじゃなくて
煙草を吸うという行為に依存しているのだろう

何もかも忘れたいから吸う
何もかも覚えていたいから吸う
この矛盾が僕を包んでいる
3秒かけて吸い
6秒かけて吐いた
煙はどこか歯車が1つ抜け落ちた世界に溶けていく
1つどころではないかもしれないけど
回らない歯車を必死に回そうとする世界に

もう一度煙を吐いた