白鷺
防波堤の先の小さな岩に
波を見つめる白鷺の姿がありました
穏やかな波が心地良いのか
じっと身じろぎもせず
獲物を捕る様子もありません
こんな白鷺を見ているうちに
どういうわけか
山の頂上に立つ登山者や
スカイダイビングに挑戦するファイター達の姿が
思い出されました
私は高所恐怖症で
大室山のリフトさえ
あの降りる時の恐怖を思い出すと
どんなに素晴らしい絶景とわかっていても
行きは良い良い帰りは怖い…で
絶対に乗ることができないのですが
(お年寄りや子供にも笑われます)
にも関わらず
いつも
空を飛ぶ空想をしてしまいます
高い崖の淵から空めがけて飛び立ち
自由に気の向くままに
優雅に飛んでいくのです
それはずっと昔
幼少の頃から今の今まで
わたしの原点のように
しごく自然なことのように…
いつも私をワクワクさせてくれるのです
この地上から空を眺めるとき
懐かしくて切なくなるのはなぜなのでしょう
夕焼けに郷愁を感じるのは
なぜなのでしょう
朝日に胸がときめくのは
なぜなのでしょう
この突き抜ける空の青さの
先に
心を委ねる場所があるのかと
今日もぼんやり
独りごちてしまいました
海を眺めながら
水の鏡に写し出される青の深さに
やはり
ため息を漏らさずにはいられません
姿を消した白鷺
今頃はあの青の中で
わたしの憧れを
存分に味わっていることでしょう
2012/10/19作