私が所属している英国のアロマセラピー団体IFAの機関紙「Aromatherapy Times」の夏号が出ています。International Federation of Aromatherapists


2年前から日本語版が発行され、今年からWebマガジンに生まれ変わりました。


僭越ながら私も記事の翻訳をさせていただいています。


アロマセラピーを学術的な観点でみたり、施術についてだったり興味深い内容が盛りだくさん。英語版の翻訳だけでなく、日本でのアロマセラピーに関することなども日本語版では記載が沢山あります。私も、日本語版のアロマセラピー・タイムズ第二号に寄稿させていただいています。この時はウェブ・マガジンでは無いので、ウェブ上で閲覧できないの~。


残念ながら本屋さんで買えるものではなく、会員の方だけが全ページの閲覧が可能ですが、サンプルの頁が非会員の為に設けられてありますので、まずはそちらをご覧くださいませ。


英語版は、現在も紙媒体の雑誌で刊行されています。希望すれば英語版も購読可能です。私は英語版の記事の翻訳をちょくちょくさせていただいています。今回は、奇しくも恩師が書いた記事でした。


サロというマダガスカル島原産のエッセンシャルオイルについてのオイル・プロファイルでした。(サンプル版では2-3頁目)


アロマセラピー・タイムズは、British Libraryという日本でいう所の国会図書館みたいなところに寄贈されています。なので、Eustonの近くに行くことがあれば、閲覧することもできるのですよ。自分が書いた記事がBritish Libraryで見られるって最高に嬉しいことね。


Aromatherapy Times Web版

(フラッシュ・プレイヤーが必要です)


アロマセラピーはとても奥が深いもので、常に色々な事を勉強していなくてはいけないんだよなあと、この雑誌を見るたびに思っています。



私の所属している某英国アロマセラピーの団体の試験通訳を先々週くらいからやってまして、昨日終了しました。
試験のほかに認定校のミーティングの通訳もさせていただきました。

なかなか忙しい夏です。

一番暑い時に、色々気を使うのでスタミナが切れそうです。


試験官として英国から来日した方は、先日エリザベス女王の戴冠式で使った精油の話で紹介した本の著者であるValerie Ann Worwood女史だったのです。私はこの本のシリーズがとても気に入っていて、参考書として重宝しているのですが、ちょうど再読していたころに、通訳の依頼が来て思いがけずにしばらく一緒に仕事するのだと知って、気が引き締まりました。
$Aromatic bouquet

"The Fragrant Heavens" By Valerie Ann Worwood


とはいえ、彼女も人間。話してみると気さくな人ですし、ちょっとというかだいぶ一人で地下鉄に乗ったり乗り換えたりするのが苦手みたい。
試験についてはかなり丁寧に行うタイプなので質疑応答の質問もかなりレベルが高くて、復習してこなかった私は、泡をふきそうでした。
私たちが所属する団体の設立メンバーでもあるので、非常にこれについては誇りをもっておられます。


英語の良い所は、それだけすごい人でも、「タメ口」がきけるところ。勿論street languageは使わずに、私にしては珍しくお上品な英語を話すように心掛けはしましたよ。でも、変に気負わずに、自分の考えはきちんと話すという態度でいるようにしました。「大先生」だからってなんでもへいへいしてしまうと、あまり良くないんです。基本的に人は平等だからサ。
おかげで、対等な関係でお仕事をさせていただけました。

ミーティングでは渋谷で会場を借りて行ったのですが、まあ、Powerpointの操作とか全然分かってない人々が来てしまって会場の係の方に教えてもらったり、使用するはずのお部屋がなんか変なペンキみたいな化学物質のにおいがこもってて、アロマセラピー団体なのにこのにおいは危険すぎる、って部屋を変えてもらったり、出席者にはバッジをつけてもらうので名簿に出欠のしるしをつけながら、物品販売、そして質問などなど、始まるまでに時間がかかってしまったよ。それなのに、花を飾る花瓶が欲しいとかいいだすし~。アタシがいないとミーティングが始まらないのに~。
新しいシラバスとか、資格についての詳しい説明が主な内容ですが、学校経営している人にとっては、シラバスが変わるということは、不安要素も盛りだくさんと言う事ですよね。だから、会が終わってから沢山の方が残って質問されました。その通訳も私が…その方達の整理も。「どのような程度の内容の質問でも皆さんお並びいただいているので、こちらから一列にお並びください」って。


ミーティングは3時間だったのですがその間マイクなしで地声で話してたんだよ私。腹筋だよ!これね、冗談抜きで、コールセンターの仕事の賜物だと思う。8時間話しっぱなしだから、喉だけで話すと声帯をやられてしまうのです。その為、腹筋と顔の表情筋、呼吸にも気をつけて日々話しているのです。電話で話すんだからたいして疲れないだろうと思うなかれ、疲れるんだから、ほんとに。まあ、そのおかげなのかどうなのか、本当の所はわかりませんが、3時間ぶっとおしで、声を張って話すことができました。耳の遠いおじいちゃんおばあちゃんに話す時の声を張るあのしゃべり方です。なんでも無駄になることは無いのです。

CEOのポーリーンは気さくな女性で、終わってから色々と積もる話をしてゲラゲラ笑ったりして楽しい人でした。

Aromatic bouquet


試験終了近くになって、Valerieに本にサインをしてもらいました。ちょっとミーハーではありますが、一緒にお仕事させていただいた記念に。

去る6月4日、英国のエリザベス二世の即位60周年の式典が行われましたね。テレビでご覧になった方もいらっしゃるでしょう。



60年前のその日、戴冠式の行われたWestminster Abbeyでは、Anointing という儀式がとりおこなわれました。今日はそのお話をしたいと思います。

Aromatic bouquet-1953 Queen Elizabeth 2



Anointingとは「香油を塗る」ということなのですが、起源は古くメソポタミア時代、エジプト時代とさかのぼることができます。



英国王は全て戴冠式の時にこの香油を塗る儀式をするのだそうです。



戴冠式はWestminster Abbey、つまり英国国教会の教会で行われます。

一国の元首が教会で戴冠式をすることは、ごく当たり前のような気がしますが、でも何故だろう?と思いませんか?



現代はそういう考えは厚くはありませんが、宗教と王位というのは密接に関係した事だった時代があり、それが伝統儀式として今でも受け継がれているのです。



詳しく言うと、香油を塗られることで、王が聖なる祭壇に立てるようになる。神に少し近づくことが出来る、と考えられているのだそうです。


香油等に関しては聖書にも沢山言及される個所があります。

出エジプト記の30章22節から25節あたりに、



"Then the Lord said to Moses, "Take the followng fine spices: 500 shekels of liquid myrrh, half as much (that is, 250 shekels) of fragrant cinnamon, 250 shekels of fragrant cane, 500 shekels of Cassia - all according to the sanctuary shekel - and a hin of olive oil. Make these into a sacred anointing oil, a fragrant blend, the work of a perfumer. It will be the sacred anointing oil."



「主はモーゼに言われた。

「上質の香料を取りなさい。すなわち、ミルラの樹脂500シェケル、シナモンをその半量の250シェケル、匂い菖蒲250シェケル、桂皮を聖所のシェケルで500シェケル、オリーブ油1ヒンである。あなたはこれらを材料にして聖なる聖別の油を造る。すなわち、香料師の混ぜ合わせ方にしたがって聖なる聖別の油を作る。」」

その他にも、「サムエル記」や「ルカによる福音書」などにも香油や香料に関する記述が残っていて、聖なる場所に入る時には手足を清め、聖なる場所や掟箱に香油を垂らして邪悪な精から守るように言い伝えられています。


香料などの歴史を勉強していくと、聖書の時代からいかに香料が神聖な場所で使われていたかを知ることが出来ます。古くから宗教ではお香や香油は、お祈りをする場所で神と私たちの交流の目的で使われています。これは洋の東西にかかわらずです。薬草として、と香りによって精神的に落ち着いたり高揚感をもたらしたり、あまり境界線がなかったのかもしれません。もっとも全てこの世にある物は神がつくりたもうたものであるから、それを使用することがすでに神聖なことであったのでしょうね。

エリザベス女王の戴冠式でも、このように神聖な儀式として香油が使われたのです。

Aromatic bouquet-Anointing of the King

The Anointing of Queen Alexandra at the Coronation of Edward VII 1903 

The Royal Collection © 2012,
Her Majesty Queen Elizabeth II
RCIN 404466

英国王の戴冠式で使われている香油のレシピというのは、聖書の中に出てくる物とは同じではありません。



香油のブレンドも、英国の歴史の中で変わらざるを得なかったようでした。



現在は英国はプロテスタントの国でしたがもともとはローマカソリックの国でした。



ヘンリー8世の時代(16世紀)から英国はプロテスタントに改宗することになったと言う話は聞いたことがあるかと思います。

カソリックの生まれでプロテスタントの夫を持ったスコットランドのQueen Anneの悲劇も有名です。



香油を使ったAnointingの儀式はもちろんカソリックから伝わったものです。プロテスタントに変わった後も、香油の儀式は残ったのは面白いですね。Anglican churchはプロテスタントですがどちらかというと儀式がカソリックっぽいところがあるのでこういった時代背景を考えるとうなづけます。



ところで、香りの方なのですが材料は最高級ですが必ずしも心地よいものではなかったのだそうです。

エリザベス一世が戴冠式をしたときに、香油があまりにも臭くて「臭いからあっちへ持って行って!」と文句をいったのだそうです。



その後、チャールズ一世が戴冠式をした時からレシピを少し変えたのだそうです。そのブレンドが、エリザベス二世の戴冠式で使われた物にごく近いのだそうです。



チャールズ一世の時はベースオイルが、「oil of Been(Ben)」で使われた香料は以下のとおり。

ネロリ、バラ、シナモン、ジャスミン、ムスク、龍涎香、霊猫香



華やかな花の香りと、動物から採れるムスクの香りが混ざる高貴な香りなのだそうです。


エリザベス二世の時には、ベースオイルが、セサミオイルを使用し、というのはBeen oilが手に入らないからで、香料の種類は上のブレンドに加えて、ベンゾインとローズマリー・スピリットが入ったのだそうです。


これらの香油はRoyal Apothecary(王室薬剤師)が専門に調合して造ったのだそうです。もとはユグノー時代に英国に伝わってきた人々らしいですね。

香水と薬局方とは昔から深いつながりがあります。Rosemary waterってアロマセラピーの歴史を勉強した方なら、出てきましたよね?ハンガリー女王の使った美容水。

香油は、次の戴冠式にも使えるようにと多めに造っていたのだそうですが、19世紀のVictoria女王の時には何せあの方は今のエリザベス女王よりも長く即位されていたので、改めてレシピを参考に造り直させたのだそうです。それが、Squire and Son companyという当時の香水の会社。



第二次大戦後、この会社は経営が続かなくなり、Savory and Moore Ltd.という会社に吸収され、Anointing oilのレシピも引き継がれることになったのだそうです。



現代版Anointing Oilは、BenzoinがMyrrhにとってかわることになるのだそうです。ミルラも聖書に出てくる精油ですね。



Aromatic bouquet-Ampula and anointing spoon


儀式では、香油はアンピュラという入れ物に入れられて、Anointingスプーンで手のひら、胸、額に垂らされるのだそうです。儀式そのものは幕屋の中で厳かに執り行われるので公開されないのだそうですが、そういった場面を描いた絵画が残っています。



ネロりは、幸福感を、バラとジャスミンは花の中の女王、シナモンは香り高い木、地面を這う動物の貴重な香料をつかった最高の香りなのですね。


次の英国王は、Charles かWilliamですよね。

いつのことになるかは、まだわかりませんが、この香油の事を覚えていたら注目しておきたいものです。
参考文献:


"The Fragrance Heaven" by Valerie Worwood

http://www.mimifroufrou.com/scentedsalamander/2012/06/the_story_of_the_royal_anointi_1.html

http://www.oremus.org/liturgy/coronation/cor1953b.html

聖書 新共同訳