浅村栄斗が移籍してしまった。
まず10年間ライオンズの勝利に尽力してくれたことに感謝している。
去年の2位も今年の優勝も彼がいなければ実現しなかった。
豪快な打撃、高いバットコントロール能力、隙を突く走塁、華麗な併殺。
思えば彼は二軍で鍛錬を積んでいたころから、中島裕之の後継者と目されていた。
中島が在籍している間にサードや外野も含めて色々経験した。
2013年ショートでサヨナラエラーを喫したことをきっかけに、
4番ファーストとしての出場が始まった。
あれよあれよという間にチームの主軸に成長すると、翌年にはセカンドへ挑戦。
2017年からはキャプテンに任命されると、
2018年には打撃3部門でキャリアハイをマークし、リーグMVP最有力の働きをしてくれた。
感謝している。嘘偽りはない。
急に自分の話。
新卒から数年間務めた会社をアテもなく辞めた。
数か月のニート期間を経て全然違う会社に就職。
前の会社で当たり前だったことがそうじゃなかったり、その逆もあった。
どっちも良いところと悪いところがある。
転職してみて思った。
一つのところじゃ見えてこないものがあるし、
どうしても環境で合う・合わないはある。
周りの人とは気が合ったほうがいいし、給料も少しでも高いほうがいい。
職場は家に近いほうがいいし、それが球場に近いと尚いい。
プロ野球選手というのは大変な商売だ。
大半は望んだわけでもないチームに入団し、最短でも7年間は拘束される。
一般人と同じような「転職」の欲望があるのは仕方ない。
そりゃ選手会だってよりFAしやすい方向に持っていくだろう。
ファンの気持ちとして建前といえば建前だけど、本心から仕方ないとも思う。
で、我が愛する埼玉西武ライオンズ。
ここ10年間で11人目の移籍だ。たぶん。もう数える気も起きない。
慣れようとしたけど慣れない。慣れたくもない。
FA取得前年に複数年契約を断られた時点で覚悟を決め、
そのシーズンはその選手のグッズを買わないようになった。
どうせ行くなら人的補償が望めそうな球団がいいなと思ったり、
一方で(大体ホークスかジャイアンツなので)そこが強くなるのも嫌だなと思ったりした。
とはいえやっぱり移籍されるとショックで嘆き悲しんだ。
そして翌シーズンその選手が所沢に帰ってくると、球場は愛憎入り混じった声に包まれた。
(正直個人的にはあんまりやったことないけど、やる人の気持ちは痛いほど分かる。そこは全肯定したい)
移籍されるのが数人なら違ったんだろう。
でももうほぼ毎年の恒例行事だ。
色々理由はある。起用法だったり、地元や古巣で現役を終えたかったり。
まあそれはある程度仕方ない。これもファンとして建前であり、本心でもある。
あとは金銭。なんてったってライオンズはお金がない。
きっぱり「条件がいいとこに行く」と言ってくれればまだ諦めもつく。
あとはフロントの対応だったり、練習設備だったり。
これは今年大幅に改善した。渡辺久信が交渉役になり情熱的に呼びかけ、数年かけた改修計画も発表されたから、もうあんまり言う人はいないだろう…。
まだ浅村の口からはっきり聞いたわけじゃないから、今回の理由はよく分からない。
でもどの要素も多かれ少なかれあって、向こうがちゃんとしたプレゼンをしたんだろう。
天然芝だし既に施設も新しい。気心知れた渡辺直人もいる。
最も金額高かったわけじゃないから意外だけど、まあそういうことなんだろう。
そりゃクソ暑くない本拠地で、多少知っている人がいたほうがいい。
仕方ないと言えば仕方ない。
色々「仕方ない」がある。挙げた要素は全部嘘偽りない。
でも野球ファンはそれで平気で受け入れられる生き物じゃない。
野球は娯楽。
建前、理屈、論理から離れ、ただただチームや選手が好きだから応援している。
一個一個の理屈がどんなに正しくても、10年間に渡ってそれを突き付けられて耐えられるわけがない。
選手を責めたいんじゃない。
(移籍そのものじゃなく、移籍に関する言動を問い正したい選手はいるが)
かと言って球団を責めたいんじゃない。
(まあどうかと思う担当者もいたけど)
ただただ嘆いている。
10年近く声援を送って夢を託してきた選手が、いきなり立ち向かってくる戸惑い。
ずっと願いを送っていたこのチームにそんなに魅力がないのか。
選手を育てる力はあるのに、他チームの後塵を拝してしまう悔しさ。
そして今いる選手たちもいつかは移籍してしまうのかという不安。
恐らく「全盛期にFAしていれば移籍先があっただろう選手」がライオンズで引退してくれたのは2015年西口文也が最後。
その前は2004年潮崎哲也まで遡らなければいけないのではないか。
(もちろん将来的にここに中村剛也、栗山巧が加わるだろうが)
正直言うとFAに関しては他のチームのファンの方には、申し訳ないけど何も言われたくない。
彼は優勝して満面の笑みを見せ本当に楽しそうだった。
そしてCSでホークスに敗れベンチで涙した。
もちろんそれがあったからって残留しなきゃいけないわけじゃない。
人間だから気が変わることもあるし、一時的な感情の昂ぶりがあるのも理解している。
それでも今となってはそれを思い返すと無力感が沸いてきてしまう。
そしてこれだけFA選手がいるというのは、
それだけ魅力的な選手を育ててきた証拠でもある。
その育成力には誇りを持ちたい。
ただそれも考え物の部分がある。
ここ5年を見ても中島が抜けてルーキー金子侑司が一軍抜擢されたり、
森友哉が打撃を買われて1年目から一軍出場してきた。
若いうちから一軍に定着することは、それだけFA取得が早まるということだ。
金子は早ければ2020年シーズン中に権利を取得することになる。まだ30歳のシーズンだ。
マネーボールには「野球選手にとって歳を取ることは犯罪行為」という言葉もあるくらいだ。若ければ若いほど他球団の触手が伸びる。
それだけに浅村は食い止めたかった。またこれで新しい若手を抜擢せざるを得なくなった。
今後も悪循環が続いていく。どこかで断ち切らなければいけない…。
来年もその次もずっと埼玉西武ライオンズを応援することは間違いない。
このチームを愛しているし、在籍してくれている選手は全力で応援する。
でも来年イーグルスとやるたびに、言い知れぬ無力感に襲われるだろう。
彼個人、楽天球団、西武球団、誰が悪いわけでもない。
でも違うユニフォームに身を包んだ彼を見て何も思うのだろうか。
こんな思いはもう最後にしたい…。