- 後宮小説 (新潮文庫)/酒見 賢一
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「腹上死であった、と記載されている」という書き出しで始まるこの第一回ファンタジーノベル大賞受賞作は、すでに20年前のものとなっているにもかかわらず、今読んでもぜんぜん古臭さを感じさせない。どうやら多くの「書痴」たちから絶賛されているようだ。わたしは「文学賞メッタ斬り 」でこの本を知ったクチだが、口の悪い豊崎氏と大森氏がほめているくらいだから、その面白さが容易に想像できるというものではないか。
この本はダイジェストで語るとその価値が半減するから、しない。とにかく読んで損はない類の本で、500円で買えるのだから是非一度読むべきだろう。なんというか、この本のシナリオに触れずにこの本の魅力を論じきれないところがもどかしい。
ところで、細かい経緯はネットで調べるとすぐ出てくるのでここでは省略するが、この本はアニメ化もされている。何をトチ狂ったか知らないが、わたしは「後宮小説」を読んだ勢いで、ついアマゾンのカートに入れてしまった。
- 雲のように風のように [DVD]
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アニメはどちらかというと好みではない。昔の作品らしく、作画や演出は丁寧につくりこまれていて好感が持てるものの、作品の持つ「軽やかな淫靡さ」が完全に去勢されているところがマイナス評価だ。まあ子ども向けの作品なのだから、「後宮」という音のもつ響きを再現するわけにもいかなかったのだろうが、今から考えるとそれほど規制もなかった時代なのだから、もっと突っ込んだ表現をしてくれてもよかったと思う。と、酷評したようだが、原作の持つ「軽さ」が活き活きと再現されているところは素晴らしいと思う。(「軽さ」と書いたが、本書の解説に高橋源一郎氏がこの作品の「軽さ」をもっと詩的に解説している。そちらを参照されたい)