- M&A新世紀 ターゲットはトヨタか、新日鐵か?/岩崎 日出俊
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金融日記で藤沢Kazuさんが紹介していたので、遠出したついでに、旅のお供で買ってみた。
案外字が大きいので、2時間くらいで読み切れる。正直言ってテクニカルな部分は少し飛ばしたのだが、M&Aという手法がいかに資本主義において重要であるのか、また、投資銀行というのが何をしているのかというのが非常によく判る一冊だった。
この本からは著者の熱い思いは伝わってくる。著者のようにグローバルな世界を相手にビジネスをしている人から見ると、世界の潮流から大きく乖離した日本経済の停滞がよりはっきりと認識されているに違いない。著者はM&Aのプロフェッショナルとして長年実務に携わった確かな経験をもとに、非常にテクニカルな話をわかりやすく書いてくれている。実際にあった案件(ディールというらしい)をネタにしているから、われわれのような素人にとってはテレビの報道で知り得ない「実態」が見えて非常に興味深い。スティール・パートナーズの仕掛けたブルドックソースのTOBしかり、キリンとサントリーの合併しかりだ。詳しくは本書を見てからにしてほしいが、テレビや雑誌に書かれているようなものとは違う「真相」が書いてあるので、まあ見てからのお楽しみということで。大前研一氏の文章 などと比べてみたら面白いかも。
著者は専門家=プロフェッショナルとして、M&Aにかかわるテクニカルなこと(TOBやMBO等)を淡々と描いているため、よくある湿っぽい話が一切なく、非常にさっぱりとして読んでいて気持ちいい。こういう人は、おそらく意識せず「フェアでオープンな競争」が、成長を促し、それが何よりも素晴らしいことだと信じているのだろう。「会社はだれのものか」なんていう、日本では一種の「禅問答」になる問いも、著者に言わせれば「会社は株主のものだから、株主が適正な利益を得られるようにフェアでオープンな市場で、合理的な経営ができる経営者が経営するのが妥当でしょ?」ってなものなのではないだろうか。こういう発想はまさに「アメリカ的」だが、「家族的経営」とかを称揚する人からするとトンデモナイ考えに映るだろう。
ところで作中にはミッタルの逸話が多いが、おそらくミッタルの成り上がりぶりは著者をしてものすごくアツくさせる話題なのだろう。たしかにミッタルの快進撃は後から振り返るとまるで嘘のようだ。「鉄鋼」といういかにも古臭い、保守の典型のような産業で、わずか30年で世界のトップに立ってしまったのだから。しかし、ミッタルをはじめインベブやH&Mのような、伝統的に見ればまさに「小国」が、M&Aによって今や世界を席巻しているのだから、まさにこれこそが、著者のいう「M&A新世紀」なのだろう。
知識が及ばないため、うまく書評が書けません。とりあえず読んでみてください。